17 ソブレメンヌイ級駆逐艦 古沢襄

中国の軍事情報で注目すべきことがある。それはロシアと中国が関係正常化以降に初めて兵器購入会議を持ったのだが、中国側が示した兵器購入リストにロシアのソブレメンヌイ級駆逐艦四ー六隻という要求があった。
このソブレメンヌイ級駆逐艦に大幅な改装を行って、アメリカのイージス・ミサイル駆逐艦並の装備を持たせるというのが、中国側の希望であった。会議の席上、中国側は「日本のイージス護衛艦”こんごう”に相当する作戦能力を持たせる」とソブレメンヌイ級駆逐艦の購入意図を明らかにした。
中国海軍の短期目標は、日本の海上自衛隊に追いつき、追い越すことにある。韓国の目標も同じ。アジアでは日本の海軍力が、突出して高い装備を持ち、バランスのとれたものとして評価されている。
中国がロシアに求めた改装計画は次の様になっている。
①後部130ミリ連装砲を撤去して、そこにYAKHONT超音速対艦誘導弾六連装発射機2基を入れる。(同時にこの誘導弾の空中発射型も導入)
②SS-N-22対艦誘導弾発射機とAK630艦砲を撤去して、そこに“カチューシャ”CIWS4基を入れる。
③SA-N-7対空誘導弾発射機を撤去して、そこに新型対空誘導弾VLS発射装置。一つの発射筒に4発・八連装、これが二基あるので合計64発。誘導弾は9M96E2・・・というもの。
改装されたソブレメンヌイ級の作戦能力は大幅に上昇し、イージスシステムと対潜能力以外は、イージス護衛艦”こんごう”級とそれほど差はなくなる。中国海軍は、四大艦隊の旗艦に改装されたソブレメンヌイ級を割り振り、国産の大型駆逐艦と大型護衛艦をもって、日本の八八艦隊に似た遠洋海軍の組織する計画だという。
ただ決定的な差があるのは、アメリカの“イージスシステム”をロシアはもちろん中国も持っていない点である。イージスシステムは、アメリカの巡洋艦「タイコンデロガ」級で初めて搭載された画期的艦隊防空システム。
少し専門的になるが、フェーズドアレイレーダーと、高性能情報処理システムによって、同時多数の航空攻撃に対して、艦隊防空を果たす事が出来る。フェーズドアレイレーダーは、かつての原子力巡洋艦「ロングビーチ」や、改装前の原子力空母「エンタープライズ」で採用されたレーダーで、レーダー板自体は固定装備されていて回転せず、電子的走査により、電波の進行方向を操作制御して、瞬時に天空を走査する画期的レーダー。
艦橋構造物の周囲に四枚設置されているが、各々90度の範囲を担当し、四枚で全周をカバーしている。性能上、各90度を超える範囲もカバーできる。
一般のレーダーは、1回転するのに、1秒前後必要で、レーダー板が裏を向いている時間は、目標の監視が出来ていないが、フェーズドアレイレーダーでは、常に目標の監視を継続する事が出来る。このイージスシステムがないと、敵の航空攻撃、ミサイル攻撃に対して、十分な防空機能が発揮できるか、疑問符がつく。
韓国も”こんごう”級のイージス護衛艦を導入する計画を持っているが、盧武鉉大統領の反米・親北・親中路線を警戒するアメリカには、そのつもりがない。北との統一を目標としている盧武鉉は、アメリカとは距離を置き、日本とは対抗する外交路線に傾斜する一方だが、軍事的にはイージス艦や軽空母の導入によって発言力を保つ腹。韓国もロシアのソブレメンヌイ級駆逐艦を購入すると言いだしかねない。

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