47 納豆好みの東西 渡部亮次郎

あなたは納豆を食べられますか。私は最近まで食べられなかった。納豆(なっとう)は、大豆を納豆菌によって醗酵させた、日本の食品。現在は、糸引き納豆の事を指す。
ヒマラヤ、中国雲南省から日本までの照葉樹林地帯にみられる食品であるが、日本における伝来経路は不明であるそうだ。日本ではとくに関東地方以北と南九州で好まれている。
とはいえ、私は東北生まれの癖に、70歳になるまで苦手だった。蕎麦の好きなアメリカの友人が、納豆まで食べるのを見て,不思議な感じがしたものである。よく靴下の臭みが気にならないものだなぁ、と。健康食品との宣伝に騙されて食べているうちに嫌いではなくなった。
特有の匂いのためか、その他の地方(特に関西・四国方)ではあまり消費されなかった。1973年に大阪に単身赴任したが、NHKの食堂では献立に3年間1度も登場しなかった。もちろん、スーパーでも売っていなかった。
しかし、その後、製法や菌の改良などで臭いを少なくしたり、含まれる成分のうち「ナットウキナーゼ」の健康増進効果がテレビなどのメディアで伝えられるようになった結果、1990年代後半にはほぼ日本中で消費されるようになったという。
また、ビタミンKも豊富で、大豆由来のタンパク質も豊富であり現在でも重要なタンパク質源となっている。総務省統計局の全国物価統計調査の調査品目に採用されているほどである。豆腐でダイエットに成功したクリントン前米大統領、こんどはヒラリー夫人とご一緒に納豆に挑戦はいかが。
しかし、外国人にとって、日本食の中の苦手とする代表的食べ物の1つであり、納豆菌が炭疽菌の仲間であることから不用意に食べると感染症に掛かるという大きな誤解をしていた外国人もいる。とんでもないこと。
本来の納豆の作り方は、蒸した大豆を藁(わら)で包み40度程度に保温し約1日ほど置いておくというもの。藁に付着している納豆菌の作用によって醗酵が起こり、納豆ができあがる。
近年は良質の藁を確保することが困難なこともあり、発泡スチロール容器や紙パックに個包装されて販売されるものが多数を占めている。この場合、蒸した大豆に純粋培養した納豆菌を混ぜ合わせ、容器に分けた状態で醗酵させるという方法が取られている。
納豆の糸の成分は納豆菌でできているため、大豆以外の食品でも納豆菌があれば納豆ができる。
ところが親父も母親も納豆作りはからっきし駄目だった。大豆も藁も豊富だが、「つと」と称する藁の容器に入れた後の「40度程度に保温し約1日ほど置いておく」というのが下手だった。3日たっても粘らなかった。それで子供あちも納豆好きにならなかったのだろう。
納豆菌は通常、極めて耐熱性の高い芽胞となって藁に付着しており、100度で沸騰している湯に数分浸すと他の雑菌が煮沸消毒されて死滅し、納豆菌芽胞だけが生き残る。
その後、37~42℃に保つと芽胞から納豆菌が発芽し増殖を始める。更に旺盛な繁殖力で他の芽胞菌類より先に栄養となる物質を盛んに消費して繁殖を阻む。
このことから、日本酒を作る際に、非常に熱に強く繁殖力も旺盛な納豆菌が原料米に混入すると、日本酒を醸す酵母よりも先に繁殖して酵母を駆逐してしまう。日本酒を仕込む酵母の仕込み期間中の食卓には、納豆は禁忌とされている所以である。
その一方で酸にはやや弱く、乳酸菌の活動によって生まれる乳酸によって活動が阻害される事がある。
また技術開発の結果普及した匂いの弱いタイプの納豆は、活動がさほど活発ではない菌株が用いられており、これらは環境によって雑菌が繁殖する余地がある。
また納豆菌の天敵として細菌寄生性ウイルスのファージ・バクテリオファージがあり、ファージ活動後に雑菌が繁殖する事もありうる事から、賞味期限内の消費が望ましい。
ちなみに茹でた直後で納豆菌繁殖前の大豆には、他の菌類が付着・繁殖する可能性もあるため、納豆を生産する工場では他の食品加工工場同様に、衛生面での配慮が常になされている。
最も典型的な食べ方はいわゆる納豆ご飯で、白米を炊いたご飯と、納豆を一緒に食べるもの。これは醤油や和ガラシを加えてかき混ぜ、粘性のある糸が現れてから食べるのが一般的。
鶏卵やウズラの卵、ネギ、ミョウガ、大根おろし、鰹節など、様々な食品を混ぜて食べることも多い。東京の下町はこれだ。
北海道・東北地方の一部では砂糖を混ぜて食べる人もる。最近はマヨネーズを混ぜる人もいる。地方によっては、ご飯にかけずに納豆だけを食べる人もいる。秋田県の一部では、粘らせたあと、大根おろしと混ぜ粘りを消して食べるところもある。
納豆をかき混ぜる際には、先に一度良くかき混ぜてから醤油やタレを加え、もう一度かき混ぜるのがおいしい食べ方とされる。これは、先にタレなどを加えると水分過多となってしまい、グルタミン酸(旨味成分)を含む粘りがあまり出なくなってしまうからである。
また、ネギやからしを加えると納豆のアンモニア臭を抑える効果があり優れた薬味といえる。ネギやからしを途中で加えずに、最後に少しだけ載せたほうがおいしいという人もいる(蕎麦のネギやわさびと同様)。
まれに、和風スパゲッティのトッピング、お好み焼き具、カレーライスにかけるなどとしても用いられる。また納豆を叩き刻んで味噌汁に入れた納豆汁は、江戸時代までは納豆ご飯よりも普通に食卓に上っていた。
秋田県の南部ではとくに好まれるが、今の東京人は苦手のようだ。
納豆は加熱することで匂いが強くなるので、好みが分かれるところである。ただし納豆天ぷらなどになると、調理中にあらかたの匂いがとんでしまううえに衣で抑えられるので、むしろ食べやすくなる。
発泡スチロール容器の普及は納豆の消費拡大に大きく貢献したが、その一方で藁に比べると通気性が悪く、また納豆の臭い成分を吸着しにくいために、納豆独特の臭いがこもって強くなる傾向がある。
この影響による風味の違いや、藁の持つ「自然食品」的なイメージを期待して、昔ながらに藁を用いた包装もごく一部の高級品や自然志向の商品に残っている。
近年では殆どないが、東京でも1960年代までは「納豆り」と呼ばれる行商人が納豆を売り歩くこともあった。売り声は「なっと~~、なっと~~ィ(最後をあげる)」というものであった。
曽根史郎の歌った「若いおまわりさん」には夜勤明けのお巡りさんが、納豆売りのアルバイト学生を「卒業するまで、へばらずやんな」と励ますフレーズがあったものだ。
茨城県水戸市 – 明治以降、産地としてもっとも知られている。毎年3月10日に「納豆早食い大会」が開催されている。
熊本県は九州では例外的に古くから普及している。これは、加藤清正が朝鮮出兵の際濡れた大豆を馬に積んでいたのが馬の高い体温で発酵し納豆になったとの言い伝えがあるからだとされる。全国規模の納豆製造会社がありスーパーマーケットで普通に売られていて、消費量も多い。
一般に消費量は東日本(特に北関東~南東北)が多く、西日本(特に近畿)ではあまり食べる習慣がなかったが、近年は関西地方でもスーパーなどで10銘柄程度の商品が普通に売られ、陳列スペースもほとんど関東と変わらなくなっている。納豆1包みのカロリーは鶏卵2個(160キロカロリー)に相当する。(参照:ウィキペディア他・頂門の一針より転載 許諾済み)

コメント

タイトルとURLをコピーしました