159 水が飲めない21世紀 渡部亮次郎

「中国到着後、生水は絶対に飲まないで下さい。湯冷まししか呑んではいけません」。日中国交回復の田中角栄総理に同行取材(1972年)したとき、外務省の係官に厳しく申し渡された。
「中国全土、硬水のためです。パリでも水道水は硬水のため、植木に水道水をやると枯れてしまう」といわれた。「水の代りにワインを飲むから、アル中が多い」(未確認情報)。
確かに水道水を飲めないところは多い。田中同行の時は絶対飲まなかった。ところが25年後の2002年3月、上海を訪れて高層ビル街に幻惑された。水道も発展しただろう。
腹下しは直ちに始まった。猛烈。トイレにつぐトイレ。寝るヒマなし。生水はさすがに飲まなかったが、水割りの氷が生水から作られていたのだ。3泊4日の旅行中回復せず。
栄養のたまらない体に血糖値降下剤を飲み続けたものだから低血糖昏睡に陥ること3度。死の寸前まで行って来た。正に水はことと次第によっては命取りとなる。
<上海在住の「半日半華人さんから」
おお~、これって噂に聞く○○水でしょう。(=塩辛い砂糖水)幼い頃ボーイスカウトのキャンプで便秘の際「塩水飲んで100ダッシュ!」を思い出しました。
異国に来て「水」の不自由さから「飲料」の摂取が多くなりました。幸いにも日系企業さんが各種現地生産されており便利ですね。ポ○リにアミ○サプ○メントに○水に・・・勿論ウーロン茶。ーーーでも、やっぱり1番は日本の水だな。>
(≪ WEB 熱線 第755号 ≫2006/08/30_Wed 
WEB 熱線 ☆ ―― アジアの街角から:亜洲街巷信息 より転載) http://chinachips.fc2web.com/common/31mag.html
以下はインターネットで
「水道水の飲める都市」で検索したら出てきた都市名である。
日本、香港、シンガポール、シドニー、ホノルル、サンフランシスコ、バンクーバー、ニューヨーク、デトロイト、アトランタ、ヘルシンキ、ストックホルム、コペンハーゲン、ウィーン、ロンドン。
「飲まない方が良い都市」
ソウル(硬水)、北京(硬水)クアラルンプール(マレーシア、殺菌不十分)、デリー(インド、殺菌不十分)、ナイロビ(ケニア、殺菌不十分)、パリ(かなりの硬水)
「飲めない都市」
マニラ(フィリピン、雑菌)、ジャカルタ(インドネシア、汚水・雑菌)、バンコク(タイ、汚水・雑菌)、カルカッタ(インド、海水混入・雑菌)、バグダッド(イラク、雑菌)、カイロ(エジプト、雑菌、肝炎ウィルス)、メキシコ(雑菌)、サンティアゴ(チリ、雑菌、かなりの硬水)、リマ(ペルー、雑菌、かなりの硬水)、ローマ(イタリア、かなりの硬水)
(註)硬水と軟水
井戸水や水道水などの生活用水は、純粋な水ではなく、いろいろな不純物を含んでいて、それによって洗浄効果に影響する場合もあります。
特に、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)は量的にも多く石けんのはたらきに大きな影響があります。
■ 硬度とは
水の中に含まれるカルシウムとマグネシウムの量を硬度と言います。単位はdH(ドイツ硬度)またはppm(アメリカ硬度)で表します。アメリカ硬度は、水1L中に含まれるカルシウムとマグネシウムの量を、炭酸カルシウム(CaCO3)の濃度に換算した重量(mg:ミリグラム)です。
ドイツ硬度は、水100mL中の酸化カルシウム(CaO)の重量(mg)に換算したものです。ドイツ硬度とアメリカ硬度の関係は 1dH=17.8ppmで表されます。
硬度の低い水を軟水、高い水を硬水と呼びます。日本では、生活用水の80%が、80ppm以下の軟水ですが、地域によっては硬水を生活用水にしているところもあります。
参考:中西ら、「被服整理学」朝倉書店 1990
ヨーロッパは硬水が多い。これはアルプスの石灰岩が全土に解けているためではないか。同様に中国にはヒマラヤの石灰分が溶けているのではなかろうか。湯冷ましを作ってみると,ヤカンの中が石灰で真っ白になるところを見て、そう思った。
ソースリッチでこってりした肉料理が多いヨーロッの食習慣。調理の際、硬水は肉の臭みを取るのに適する。テーブルウォーター食事中、口の中をリセットさせるための、必須アイテムとして瓶詰めのエビアン水を飲んでいるが、これはワインより高価と聴いたが本当だろうか。
2003年に京都を中心に行われた世界水フォーラムで公開された資料を見ると、飲料水不足人口は12億人で、衛生的に問題がある水を飲んでいる人口30億人を加えると、世界で42億人もの人(全人口の2/3に相当)が飲料水に困っているという事実を知らされる。
太平洋の島国は、アジアやアフリカ大陸中央部の乾燥地帯と並んで、水不足が最も深刻な地域だ。この地域は雨量が比較的多いところだが、大きな川や湖は少なく、多くの国は水源の大部分を地下水に頼っている。
ところが、近年リゾート開発などにより地下水の汲み上げ量が増えたため、水圧のバランスが崩れて海水が地下水に浸透し、飲料水として使用できなくなる井戸が続出している。
このような危機に対し、海水を淡水化することによって飲料水を確保しようとする国がいくつも出てきた。例えばパラオ共和国では、新しく建設中の首都の電気や水道を、海洋深層水を汲み上げて海洋温度差発電(OTEC)と淡水化を行うことによってまかなおうと計画している。
実は水と安全はただというわが国でも水問題は深刻なのだ。これまでも毎年のように夏場には各地で渇水被害が発生しているが、台風が1回訪れると何事もなかったかのように騒ぎが収まるのは不思議なくらい。
水源となる湖や川の水質悪化の問題も年々増えていて、1996年に埼玉県で起きた病原性原虫クリプトスポリジウムの汚染では8812人が感染し、大きな問題として取上げられた。
この原虫はこれまでの塩素による殺菌では死なないため、オゾン殺菌など新しい殺菌方法を導入してやる必要があるから厄介。
また仮令、浄水場でオゾンや活性炭などの処理を行ったとしても、古い配管が残っているところでは家庭の蛇口までの間で鉛汚染などが起きる場合があり、安心はできなくなっている。
このような問題を知ってか、知らずか、一般の家庭ではボトル飲料水や家庭用浄水器がたいへんな勢いで普及している。そういった家庭では、生の水道水は既にトイレや風呂などで使用する洗浄水(中水)として考えられ、口に入る上水とは完全に別扱いしている。
ボトル飲料水の値段は1リットルあたり200円程度で、家庭用浄水器では減価償却とフィルター交換の費用などを考慮すると1リットルあたり2円程度となる。
上水道料金は場所によって違うが、押しなべて言うと1リットルあたり0.2円程度だから、それぞれ1000倍、10倍のお金を払っていることになる。このことは、わが国も欧米のように上水と中水を区別した水道事業を行う時期に来ていることを示している。
上水の水源をどこに求めればよいのか?先に述べたように、陸水系の水源は世界的にも国内でも限界に近づいている。そうなれば、太平洋の島国が計画しているように海を水源とした水道インフラの整備が不可欠となる。
ところが、陸や大気からの影響で海の環境もどんどん悪化しているので、特に汚染がひどいと思われる都市に近い沿岸の海は、安心して水源とすることができない。
そこで注目されるのが海洋深層水だ。海洋深層水は陸や大気からの汚染を受けない深度にあるたいへんきれいな海水だし、温度が低いという特徴を活かせば、先に出てきたOTEC海洋温度差発電などにも使える。
また、植物の栄養になる窒素やリンなども多く含まれることから、海の生き物を支える植物プランクトンや海藻を増やすこともできる。
海洋深層水は、世界中どこの海でもある程度の深度以下から汲み上げれば、同じような性質のものを取ることができるので、安全で安定した水源として今後ますます注目を集めることだろう。(山田恵氏の論文などを参照)2006・08・30

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