188 竹中氏の参院議員辞職の裏側 古沢襄

竹中平蔵総務相が安倍新内閣の発足を機会に参院議員も辞職することになった。前回二〇〇四年参院選挙に比例代表で出馬、七二万二五〇五票でトップ当選したが、任期を三年残しての議員辞職。一二万三五二一票の次点で泣いたプロレスラーの神取忍さんが繰り上げ当選となる。
「小泉内閣が終わるのに伴い、政治の世界での私の役割は終わる。今後は民間人の立場で、日本のために貢献したい」というのが議員辞職の弁だが、小泉内閣が発足以来、非議員の時から首相の知恵袋として存在感があった。二〇〇一年に民間から経済財政担当相として初入閣し、首相官邸主導の経済財政諮問会議を取り仕切って、党政調会と対立することもあったが、小泉首相の後押しもあって強引に構造改革路線を主導してきている。
その後、金融担当相も兼務し、銀行の不良債権の抜本処理で一定の成果をあげ、小泉首相が政治生命を賭けた郵政民営化では担当相として法案成立に力を尽くしている。昨年10月の内閣改造で総務相に就任、地方財政の立て直しに取り組んでいた。
だが、小泉首相の退陣が迫るにつれて、さしもの竹中総務相の神通力にかげりが見えていた。小泉首相との蜜月関係にも秋風が立っていたと評する向きもある。昨年十二月にNHKをめぐる改革論議で竹中総務相は、民営化も含めてNHK改革を論議すると表明したが、小泉首相は「NHKは民営化しないという閣議決定がある」と竹中総務相の肩を持たなかった。このところ頻繁に会っていた小泉首相との個別会談もめっきり減っていた。
竹中総務相の相談相手だった中川秀直政調会長とは竹中・中川コンビといわれていたが、すきま風が吹いている。むしろ対立関係にあった与謝野馨経済財政担当相と中川政調会長の関係が密になった。地方財政の立て直しで与謝野経済財政担当相は「人件費を含めた地方財政削減が最重要項目」と唱え、中川政調会長も地方交付税の見直しを示唆している。
この情勢下で竹中総務相は孤立感を深めていたのではないか。安倍次期首相は官邸と党の関係を再構築する姿勢をみせている。新内閣では竹中総務相の出番はなくなると思う。それなら民間に戻って、持論の構造改革路線を自由に発言したいというのが、竹中総務相の議員辞職の真相ではなかろうか。

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