219 安倍人事に森元首相の助言 古沢襄

私なりに今度の自民党役員人事と閣僚人事の選考経過を追ってみると意外な事実が浮かびあがる。その追い方は少し変わっている。マスコミ各社が得た情報は、どこも似たり寄ったりで大差ない。あらゆる情報が夜回りした政治記者から入ってきたが、正反対の情報もかなりあった。それを政局デスクがどう判断したかによって紙面が異なった。
それを取材された側がどう見ていたのか。つまりはマスコミに対する逆採点。その眼でみると産経新聞がほぼ満点に近い。私は安倍首相の後見人は森前首相から中川幹事長に移るとみている。安倍大勝の流れを作ったのは中川幹事長であったことはいうまでもない。
その流れからいうと日経新聞が一番有利な立場にいたのではないか。中川幹事長は日経新聞の元政治記者。それが何故、産経新聞の後塵を拝したのか。ここに人事の謎を解く一つのカギがある。
意外な事実とは安倍首相は、中川幹事長を想定する一方で麻生幹事長を想定している。安倍首相の念頭には、参院選で小沢民主党に勝つことが第一。その選挙を乗り切って、安倍カラーの諸政策を実行する腹でいる。総裁選で麻生人気を目の当たりにした安倍首相は、選挙の顔として麻生幹事長を一つの選択肢と考えている。安倍支持の若手議員の中でも麻生幹事長をいう者がいた。
それに待ったをかけたのは森元首相であった。産経新聞は森氏に食い込んでいる。大方の政治記者は、森氏は小泉退陣とともに派閥の代表を譲り、安倍首相の後見人から身をひくとみていた。森情報は中川情報よりも一ランク低く評価されている。
ところが安倍首相は自ら積極的に森氏の意見を求めている。森氏は①麻生幹事長ではなく中川幹事長の起用②官房長官は与謝野馨氏ではなければ、安倍首相が好む人材を登用すればよい・・・と答えた。与謝野氏の官房長官起用については小泉前首相も賛成していない。
中川氏の周辺取材をすれば、中川氏と良い与謝野官房長官が第一に浮上している。党と官邸が一体となった最強の布陣ともいえる。しかし、このことは中川幹事長がキングメーカーとして絶大な権力を持つことになりかねない。党内的な反発もいずれ出てこよう。そのことが中川幹事長にいらざる風圧をかけることを森氏は懸念した。
産経新聞は森情報にウエートを置いて「中川幹事長・塩崎官房長官」で踏み切った。森情報を第二順位にした他の各社は、そこまで踏み切ることができなかった。森氏は産経新聞にいたことがある。それだからというわけでないが、産経新聞の政局デスクの判断が正しかったことになった。

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