安倍訪韓をめぐって様々な憶測が飛び交っている。一番傑作なのは韓流スターや韓国ドラマが大好きな昭恵夫人の進言で日韓関係の改善に乗り出したという説。荒唐無稽の類だが、事実関係を知らないで、こういう憶測が大手を振って歩き回るところが、平和ボケ日本らしいところ。
安倍訪韓の動きは八月からあった。十月末で任期を終えるアナン国連事務総長の後任となる韓国の潘基文(パンギムン)外交通商相が来日して、当時の安倍官房長官に会い、昨年十一月以降中断している日韓首脳会談の再開に応じるという盧武鉉大統領の意向を密かに伝えている。小泉首相の訪韓招請ではない。次期首相が確実とみられていた安倍氏に照準を絞っていた。安倍氏も返事の仕様がなかったであろう。
潘基文外交通商相は、安倍氏が首相に就任したら”早期訪韓”を要請していた。勘ぐれば盧武鉉大統領は北東アジアで初めての国連事務総長を韓国が獲得するために、なりふり構わない媚日外交を演じてみせたともいえる。これに乗るほど日本はお人好しではない。盧武鉉大統領の反日姿勢には、さんざん煮え湯を飲まされている。
親北朝鮮・反日路線をとり、日本の国連安全保障理事会常任理事国入りに反対してきた韓国だから虫のいい媚日外交。日本が潘基文外交通商相の事務総長に反対すれば、米韓関係が悪化しているから常任理事国の米国も反対に回ることを怖れたのであろう。勝手といえば、これほど勝手な政権はない。
この睨み合いの状態が九月から急展開をみせた。常任理事国の中で去就がはっきりしていなかった米国が、潘基文外交通商相の事務総長就任を容認する方向に動いていることが明らかになった。常任理事国の五カ国が揃って潘基文事務総長でまとまり、アジア各国の大勢が潘基文事務総長を支持する中で日本だけが反対すれば孤立を免れない。
日本も潘基文事務総長を容認せざるを得なくなった。どうせ容認するのならば、盧武鉉大統領の反日姿勢をやめて貰うことが条件になる。外務省を通じて水面下で行われた折衝はこのようなものであったろう。最終的には安倍首相が訪韓して、日本も潘基文事務総長に賛成するストーリーが描かれた。
これで分かるように安倍訪韓は日本側が仕掛けたのではない。しかも盧武鉉大統領の媚日外交も国連事務総長を狙った一時的なものとみておく方がよいのかもしれない。さらに問題がないわけでない。日本が国連の常任理事国になれず、韓国が国連事務総長になれば、相対的に日本の国連外交の地位が低下せざるを得ない。北朝鮮に対する制裁も常任理事国の中国と事務総長の韓国は慎重論を唱えるであろう。
麻生外相は三日午前の閣議後の記者会見で、「アジアから(次期事務総長を)出すことをずっと言い続けてきた。予定通りで良かったと思う」と述べたのは、多分に外交辞令。火種が残っている。折から北朝鮮外務省は「今後、安全性が徹底して保証された核実験を行う」と声明を出した。
訪韓する安倍首相は盧武鉉大統領に北朝鮮の脅威をはっきり伝える必要がある。それが主張する安倍外交でなかろうか。新しくなる潘基文事務総長も曖昧な態度は許されない。それは国連がますます形骸化して、力を失うからである。
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