マスコミにとって安倍首相は歴代の総理大臣の中で一番取材し難い存在ではなかろうか。秘密主義とはいわないが、人事の口の堅さには党役員人事、組閣人事で思い知らされた。ほんどの新聞の人事予想は枕を並べて見事に外れてしまった。
小泉前首相も人事の手の内をみせない人であったが、前夜には電話で「明日は東京にいて下さい」と電話で予告があった。そこに網を張っていれば、閣僚ポストは分からないまでも入閣候補だと目星をつけることが出来た。
官房副長官だった安倍氏を幹事長に抜擢したサプライズ人事の時も、前夜に小泉首相から安倍氏の携帯電話に「明日は東京にいてね。じゃーね」と一方的ながら電話通告があった。ポストは分からない。森元首相から幹事長に起用されると知らされて、安倍氏は驚いたという。
安倍首相も小泉流の人事をやると誰もが思った。前夜、遅くまで入閣予想者のところに記者たちが張り付いたのだが、どこにも予告の電話がなかった。この点では小泉前首相よりも徹底している。マスコミ予想が外れるわけである。入閣予想者も不安な一夜を過ごした。
首班指名が行われた衆院本会議で津島派の久間章生氏(前総務会長)が中川秀直幹事長に組閣人事の感触を尋ねている。「おれにもよく分からないんだ」と中川幹事長は洩らしたが、これが正直なところであろう。
自民党の過去の総裁選を振り返ると議員票を集めるために閣僚ポストを予約する手形が乱発された。その多くは不渡り手形となったものである。安倍首相はポスト予約は一切しなかった。人事の徹底した秘密主義も、新しいスタイルなのかもしれない。
229 マスコミ泣かせの安倍人事 古沢襄

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