232 北朝鮮核実験をめぐる情報戦 古沢襄

訪米中の谷内正太郎外務事務次官はクラウチ米大統領副補佐官とホワイトハウスで会談したが、北朝鮮の核実験が今週末にもあり得るとの認識で一致したという。もっとも谷内次官は「状況証拠があるわけではない」とも言っている。
米国の北朝鮮軍事情報は偵察衛星とコミントと称する通信情報。偵察衛星は地上のマッチ箱まで鮮明にとらえることができる。とはいえ北朝鮮の軍事施設や軍需工場は、多くは地下式になっている。航空基地も山岳をくり抜いて、そこから攻撃機が出撃する国土の要塞化が出来上がった。北朝鮮の北部山岳地帯は、まさに要塞と化している。高レベルの偵察衛星であっても、地下式、半地下式の軍事情報に対しては限界がある。
北朝鮮が核実験をするのは予想されても、その兆候を掴むには地下式の核施設に運び込む軍事車両の動きから推測するしかない。1994年1月に来日したウルジー米CIA長官は日本側に偵察衛星の情報収集能力に一定の限界があることをうち明け、人的情報を持つ日本側の協力を要請している。
北朝鮮に関する人的情報は韓国と日本の方が米国よりも強い。韓国は脱北してきた北朝鮮軍人らを訊問して高度の人的情報を得てきた。日本の場合は朝鮮総連から得た北朝鮮情報の積み重ねがある。
これはあまり知られていないが北朝鮮東部の通信情報は日本、西部の通信情報は韓国が傍受している。鳥取県境港市にある自衛隊の美保通信所は、二十四時間態勢で北朝鮮の陸海空軍が使う無線を傍受、この情報は米国家安全保障局にもダイレクトで伝えられいる。韓国の場合は傍受基地が白翎島にある。
北朝鮮側は日本と韓国が無線傍受していることを知っているから、有線通信を多用している。核実験の作業も有線通信で行われているからガードが固い。朝鮮総連情報も以前のような高レベルの情報がでてこなくなった。日本側も北朝鮮の核実験について具体的な根拠を持っていないというのが正確なところであろう。

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