北朝鮮が核武装国家を宣言したことに世界各国は一致して非難したが、その非難内容は必ずしも一様でない。代表的なのはロシア。プーチン大統領は閣議で「無条件で非難する」と述べたが、下院のコサチョフ国際関係委員長は「(核実験は)ブッシュ米政権によるここ数年の集中的な圧力の結果だ」と米国が悪いと責任転嫁している。
一方、日本でも米軍が沖縄県の嘉手納基地・嘉手納弾薬庫地区に配備する最新鋭の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)ミサイルの配備に反対する市民団体が座り込み、配備を阻止をした。核を搭載したノドン・ミサイルをどうやって撃ち落とすつもりでいるのだろうか。
米国の核に対しては鋭く反応する原水爆反対運動も、北朝鮮の核武装に対する反応が鈍い。今こそ隣国の核武装に反対する全国運動を展開する時期ではなかろうか。「米国の核は悪だが、共産圏の核は善」という古典的なイデオロギーにとらわれているとしたら、社会党が国民から見捨てられたように、国民の支持を失うであろう。
北朝鮮に対して融和政策を推進してきた韓国の盧武鉉政権の努力は水泡に帰している。38度線ははさんで北朝鮮と対峙している韓国にとっては、日本と同様に深刻な局面を迎えた。韓国の情報機関・国家情報院の金昇圭(キム・スンギュ)院長は「咸鏡北道吉州(キルジュ)郡豊渓里でも9日午後3時から、30―40人程度の人員と車両の動きが確認された」と明らかにし、「北朝鮮が連続で核実験を行う可能性があり、詳しい内容の把握を進めている」と述べた。 北朝鮮が追加の核実験をする可能性は十分あると見なければならぬ。
米国はどうであろうか。米本土を射程におさめるテポドン・ミサイルが完成していないこともあって、日本や韓国ほどに危機感が感じられない。かなりの温度差がある。むしろ日本や韓国で核武装論がでることを怖れる論調すらみられる。
世界各国が北朝鮮の核武装に一斉に非難したといっても、北朝鮮は圧力とは受け止めていないであろう。むしろ北朝鮮の核武装が逆に圧力になったとほくそ笑んでいるに違いない。瀬戸際外交の勝利と自画自賛しているのが実情ではないか。米国や日本が制裁を強化しても、北朝鮮は国内を引き締め、戦前の日本ではないが「欲しがりません勝つまでは」式のやり方をとるのではないか。それに不満を持つ層は容赦なく粛正するであろう。
日本や韓国は、ひたすら北朝鮮の金正日体制が自己崩壊するのを期待し、待ちの方策をとるしか選択肢が残されていない。即効薬はない。制裁を強化したからといって、明日にも金正日体制が崩壊することなどはあり得ない。さりとて融和政策が機能しないのは、盧武鉉政権で実証されている。自立を目指す安倍外交にとっても正念場を迎えた北朝鮮の核武装となった。
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