237 暴れ者国家を甘やかした中国、ロシア 古沢襄

自由な言論が保証されている日本だから何を言おうと勝手だが「拉致問題に深入りせずに北朝鮮と国交を結び経済支援をしていたら、これほど北朝鮮から敵国視されることはなかった」とか「ブッシュ大統領が平壌を訪問して金正日国防委員長と会えば問題は一気に氷解する」と北朝鮮を代弁する意見をいう識者(?)なる者がテレビに出演したのには正直に言って驚いた。韓国の盧武鉉大統領が推進してきた融和政策が破綻したのを少しも理解していない。
その一方で「今こそ日本が核武装すべき時だ」という勇ましい意見もテレビで堂々とまかり通っている。かなりの数の日本人は、米国が北朝鮮の核施設やミサイル基地をピンポイント爆撃して破壊してくれるのを密かに期待している。これを他人のフンドシで相撲をとるという。なかには「金正日を暗殺するしかない」という物騒なことをいう知識人もいる。これも他人のフンドシで相撲をとる類だ。
要するに打つ手がないということだ。核という危険な武器を持った狂人を遠巻きにして思案投げ首、群盲が象を撫でて、あれこれ言っているに過ぎない。相手は狂人、世間常識でおし測っても通用しない。やはり遠巻きにして、相手が自滅するまで待つしかないということになる。それをガアガア騒ぎ立てて「打つべき手はないのか」と安倍首相を責め立てても仕方ないではないか。国会で民主党はじめ野党の質問が見物である。
北朝鮮が国際社会で手に負えない暴れ者国家となったのは、ソ連時代からのロシア、反日に狂奔した中国にも責任の一端がある。いずれも米国に対する牽制球として北朝鮮を甘やかしてきた。ソ連は軍需物資、中国は食糧、石油などで北朝鮮を支援してきている。
だがロシアや中国は北朝鮮の開放経済化にもっと積極的であるべきでなかったか。天安門事件後に登場した江沢民主席が、反日教育によって国内不満を外に向ける方策をとったのは為政者の常套手段といえるが、反体制派を押さえ込んだ後も反日路線に固執し続けてきた。小泉首相の靖国参拝によって反日が、さらにエスカレートされている。
それよりも北朝鮮を改革・開放経済化させることにもっと本腰を入れるべきでなかったか。宗主国を自負するなら、その役割を果たすべきであった。今では中国の言うことも聞かない暴れ者国家になってしまった。
ロシアとて似たようなものである。米国が旧衛星国家群に手をのばし、ロシア離れの手助けをしていることを、苦々しく思っているのは想像に難くない。だが旧衛星国家がロシア離れをみせているのは、米国のせいだけではない。民主化、自由化の遅れがロシア離れを加速させている。北朝鮮を米帝国主義の防波堤とみる感覚だけでは、冷戦終結後の世界政策としては後ろ向きではなかったか。

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