248 ”飛ばし”の聯合ニュースか? 古沢襄

新聞やテレビは限られた紙面や時間の中でニュースを伝える宿命を持っているから、政治家の発言を”切り取って”報道せねばならぬ。政治家の側から言わせれば、前後の脈絡を意図的にカットしてセンセーショナルな一方的報道をしたと非難する。ベテランの記者になれば起こらないことだが、若い記者が功名心に駆られて極端な”切り取り報道”をすることがある。
「犬が人間を噛んでもニュースにならないが、人間が犬を噛めばニュースになる」という喩えは、すでに陳腐化してしまったが、週刊誌の”飛ばし記事”などはセンセーショナリズムの典型といえる。韓国の報道には日本の週刊誌的な”飛ばし記事”がままある。時には慎重な報道よりも、先に金脈を掘り当てることがあるから、一概に低く見るべきではないのかもしれない。お国柄の違いなのであろう。
中国の唐家セン国務委員が北朝鮮の金正日総書記と会談した時に「申し訳ない」と金正日が謝り「二度目の核実験はない」と言った・・・というニュースが韓国の聯合ニュースから流れた。同じ時間に唐家センと会談した米国のライス国務長官は、中国側の訪朝報告に「特に驚くべきことはなかった」と語っている。
共産圏の外交官は会談内容は秘匿して公表しない。自由主義諸国は選挙があるから、国民の眼を意識せざるを得ない。秘すべき内容は公表しないが、できるだけニュアンスを伝えようとする。秘すべき内容は、一定の時期を経て、すべて情報公開されている。
聯合ニュースは唐家センが「一時的な実験中止か」と迫ったら「追加の核実験はない」と金正日が答えたという。中国と北朝鮮という共産主義国家の会談内容が、これほど微にいり、細にうがって洩れてくるものだろうか。ここまでくると少し出来過ぎた作り話の匂いがしてくる。
北京では唐家センとともに会談に出席した武大偉外務次官が宮本雄二中国大使に「北朝鮮は二回目の核実験をやるとも、やらないとも明言しなかった」と説明している。唐家センはライス国務長官に対して「金正日らと面会したことは、幸いにも無駄ではなかった」と述べた。何らかの心証を唐家センが得たことが窺われるが、それは日米両国が求めている核保有の断念とはほど遠い。訪朝効果を最大限に誇示したい唐家センと冷徹な”鉄の女”ライスのやりとりは面白い。

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