衆院神奈川16区と大阪9区の統一補選は、安倍自民党が小沢民主党を退ける結果となったが、この選挙結果を自民党はじめ各政党はどう分析しているのだろうか。安倍首相に対する高支持率が初陣を飾ったという見方だけでは心許ない。
私は低投票率が予測される来年の参院選のモデルとみて次の点を注目していた。
①民主党候補は民主党のみならず社民党と国民新党の支持を得た連合軍による選挙態勢をとった。大阪は伝統的に反自民の風土があるから革新票が強い。社民党が単独候補を立てれば一定の票を集めたであろう。出口調査によれば、かなりの社民党票が民主党候補に流れている。それを差し引いた民主党票は投票結果よりも低いとみる必要がある。
②民主党と社民党の選挙協力は小選挙区という衆院補選だから可能であった。だが参院選では社民党は党の存亡をかけた戦いになる。比例代表で一定の議席を獲得するためには選挙区にも積極的に候補者を擁立せねばならぬ。自民党と公明党にみられる協力の構造が野党の中でも生まれる。やはり民主党が単独でも自民党に勝つ自力を養わねばならない。
③国民新党は特定郵便局の郵政票が主体とみている。その票が100%機能したであろうか。新党日本はすでに実態が薄い政党になっているが、田中康夫前長野県知事の知名度が選挙結果にどう表れたか。民主党応援団の田中真紀子元外相の影響力が衆院補選では、表れていない。
④国民新党は衆院四人、参院四人のミニ政党だが、郵政票という基盤があれば消滅しないとみていた。郵政票は一時のような大きな影響力が失せたが、これが自民党につくか、民主党側につくかは、プラス・マイナス効果として軽視できない。それが衆院補選では、あまり目立った動きをみせていない。結果的には国民新党の選挙協力は自民党優位の基盤を崩すには至っていない。
⑤これは選挙を前にして郵政造反の無所属議員と元議員の復党問題がクローズアップされた影響があるとみている。郵政民営化の大方針は、昨年の総選挙で決着しているが、民営化の具体的な内容はこれから決まる。郵政票は外野から政府・与党に働きかけるのか、むしろ政権内にもぐり込んで影響力を行使するかの岐路に立っている。
⑥衆院補選の結果をみるかぎり郵政票は無所属議員の復党をきっかけにして、後者(政権内)に進む気配が濃厚となった。それはまた国民新党の存立にも影響する。ただ復党問題が刺客として放たれ当選してきた一年生議員の反発で、馬の前にぶら下げたニンジンよろしくもたついたまま手間取ると前者(外野=国民新党)に戻る可能性がなくはない。
⑦与党内では独自性を目指す公明党が太田新代表になって、自民党との協力関係がどうなるかが注目された。衆院補選では自民党層を上回る公明党・創価学会の支持層が自民党候補に一票を投じた。投票率が低い選挙では、公明党・創価学会の組織票が大きな力を発揮する。
⑧来年の参院選では公明党・創価学会票がどう動くのであろうか。公明党にとっては参院選は党勢拡大のチャンスになる。小選挙区は自民党、比例代表は公明党という棲み分けを太田新代表は自民党に求めるであろう。そこにほころびが出れば、民主党がつけ込む隙がでてくる。復党問題と自民・公明の選挙協力の行方によっては民主党にチャンスが生まれる。安倍自民党は「勝った、勝った」と美酒に酔ってばかりではおれまい。
250 美酒に酔うだけではおれまい 古沢襄

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