水に落ちた犬は打て、とばかり、2006年10月22日に行われた衆院補選で2つとも負けた民主党。選挙頼みから敢えて病身を隠すように登場した党首小沢一郎ではあったが、あえなく敗戦。
水に落ちた犬は助けないで打て、とはかの毛沢東が多用していたように思うが、調べても出典は良くわからない。魯迅の残した格言との説があるが、とにかく小沢はしばらく水に落ちた犬同然、四方から叩かれるだろう。
朝日新聞が一番同情的なはずが結構厳しい。
<「小沢流」選挙に限界も>
「まだまだ民主党として力も不十分だった」。民主党の菅直人代表代行は22日夜、神奈川県厚木市内の後藤祐一氏の事務所で敗戦の弁を述べると取材は受け付けず、外に姿を消した。
小沢氏はこの日、別の選挙の応援で北海道に入り、夜に東京に戻ったが、党本部に姿は現さなかった。
「2敗でも大きな影響はない」と党幹部は早くから予防線を張ってきたが、惨敗に衝撃は隠せない。「選挙に強い」ことが小沢氏の求心力の源泉だからだ。自民党幹部は22日、「小沢神話が崩れた」と得意げに語った。
不利な状況はそろっていた。両選挙区とも自民党の議席だったうえ、新首相誕生の「ご祝儀」と北朝鮮問題が加わった。ただ、それを差し引いても攻め手を欠いた。
民主党は、北朝鮮問題について「政府との違いを際立たせるつもりはない」と積極的には取り上げなかった。唯一、中川昭一自民党政調会長や麻生外相の核保有議論をめぐる発言を批判したが、流れを変えられない。
「(核保有発言に)世論や報道が反応しなくなっている」。小沢氏は10月18日、こうぼやいた。
代わりに格差や社会保障などに重点を置いたが、鳩山由紀夫幹事長は22日、「十分な争点にならなかった。医療問題や障害で苦しむ方々の課題に対し前半は功を奏したが、核実験以降、力不足だった」と悔しさをにじませた。
ほころびの芽も見え始めた。核実験を受け、小沢、菅、鳩山3氏は「周辺事態ではない」と結論づけたが、渡辺秀央元郵政相や前原誠司前代表ら15人が19日に会合を開き、「周辺事態にあたる」との異論が出た。 (筆者註 渡辺は元小沢側近)
今回の補選は小沢氏のもと、菅氏が神奈川、鳩山氏が大阪の責任者として任された。補選惨敗が、3氏の「トロイカ」態勢による党運営に対し、党内から不満が出るきっかけになる可能性もある。
鳩山氏は22日夜、こう語った。「それぞれ勝てなかった責任はあるし、代表の責任も当然ある。ただ、一致団結して戦いの基盤を作り直していく。次に備えることが大事で、そのために責任を果たすことが重要だ」 (23日)
<毎日新聞>
民主党は新政権との対決の出はなをくじかれた形で痛手。小沢一郎代表で参院選を戦う基本に変化はないが、同氏の求心力に陰りを生じそうだ。
民主は格差や社会保障問題を重視、小泉改革路線を継承した安倍政権批判を展開したが、首相の中韓歴訪、北朝鮮の核実験問題などの外交問題に埋没した。【鬼木浩文】毎日新聞 2006年10月23日 3時05分
<読売新聞>
一方、民主党は4月の千葉7区補選で勝利した勢いを持続できず、今後、小沢代表ら執行部への批判がくすぶる可能性もある。
民主党の鳩山幹事長は22日夜の記者会見で、敗因について「北朝鮮の核実験が起き、我々の主張した格差問題が十分な争点とならなかった」と語った。
<産経新聞>
自民党の丹羽雄哉総務会長は党本部で記者団に「重要法案成立への環境がつくれた。民主党に打撃になる」と語った。(23日)
<あるプロのブログ>
予想通り衆院統一補選は神奈川、大阪とも自民党が民主党を退けた。安倍首相はホッとしたであろうが、小沢代表にとっては深刻な敗北となった。選挙に強いという小沢神話の崩壊の始まりといえる。
<徳永圀典氏のブログ>
では、本当の民主党完敗の原因は何かである。
1.小沢一郎民主党党首に魅力が無いということ。
2.小沢一郎は安倍総理と比較して問題ならない。人相・現代性・世論の人気、総理就任以後の実績、どれ1つ取っても小沢は負けている。古い自民党そのままの利権屋顔、寝技ばかりの、裏の男なのである。安倍氏は表の顔であり輝きがあり、現代政党党首として脱皮している。スピード感がある。
3.第一、根本的な事は、小沢が心臓病だということである。一部の説では、小沢は「心不全」、「重症度クラスⅢ」、「安静にしなくては明日をも知れぬ」と指摘されている。これでは国民冒涜である。これが決定的敗因であるが、どのメデイアも指摘しない。国民はお見通しなのである、午後本会議に必ず欠席していた男は落第なのである。
4.候補者の選挙演説に、飼い犬を連れて行くセンスは逆に出た、選挙民をバカにするなということだ。政見も人相も魅力がないから犬に民衆の視線を向けただけの稚気である。
5. あの3羽烏―小沢・菅・鳩山―の三文田舎芝居の役者、どうしてあんな過去の男ばかり出しゃばるのか。前原なら国民受けしたかも知れぬ。
6.年内に「国の安全基本策」を考えると、あの尊大な松本政調会長が言った、オオバカの平和ボケ民主党である。隣で、爆弾もったのが暴れているというのに、第2党がそれではね、顔を洗って出直すがいい。
7.最後に、安全保障という根幹部分で国民の信頼が無いことが大きい要因である。犬連れて来ても騙されない国民だ。理念を基本に再統一しなくては真の政権党に成りえない
<クライン孝子メルマガ>
民主党の敗退については7月中旬、日本帰国の折、外国人特派員協会での小沢民主党代表の記者会見に出席し、「これはダメだ」と、途中で退場した時から、感じていましたので、それほど驚くにはあたりませんでした。
民主党には申し訳ないのですが、今の激流の中、どうもこの党、取り残されたまま国民にそっぽを向かれているような気がしてならない。何しろ執行部の顔そのものがそうで、イメージチェンジになっていないし・・・
しかも北朝鮮の核実験では、確固としたメッセージを国民に伝えることができなかった。これが致命傷になりましたね。
ドイツの社民党のように、もっと大人にならなければ、政権からはますます遠ざかっていく。
1979(昭和54)年でしたか、ドイツも、旧ソ連が西側に向けてロンドンやパリまで届くという核弾頭ミサイルをすえつけて威嚇したことがあります。
当時西ドイツの政権は社民党にあり、シュミットが首相でした。その彼はどうしたか?
その対抗策として、米国の中距離核兵器パーシングを導入し、力には力で対抗するという強行策により、ソ連と対峙し、その間、ソ連側を対話のテーブルにつかせ、気長に説得し、ついに、それらを撤去することに成功しています。
こうした現実的な政策で国際政治に取り組むことが、今の日本の民主党には欠けている。だから、多くの国民は民主党に1票投じることをためらっている。民主党は、その事に1日も早く気ずくべきでしょう。(在独)
小沢の生きる道は、自民党より勇ましいことを提案することだ。それなのに、北朝鮮対策として周辺事態法の適用反対を勝手に打ち出し、おまけに」党内から前原前代表らの反発を食らって値を下げた。補選敗北の原因を自ら作った。
しかし小沢のこのような姿勢は絶対治らない。性格だからである。加えて、自らは何も提案できず今のように安倍政治をあれこれ批判して居るうちは政権獲得は絶対にできない。参院選後の引退、確実だ。
小沢が政界実力者に登場したのは、自民党時代、田中派内の糾合に優れていたことと、たった1回だった閣僚(中曽根内閣自治大臣、国家公安委員長)として野党と対決する姿勢が評価されたからである。
それが野党へ走ってしまったのでは墓穴に自ら飛び込んだようなものだ。角栄はともかく、金丸が居て、弟子がたくさん居て、独裁者然としていてこそが小沢だった。それがいま嘗ての手下は皆無となった。
<小沢・民主代表が検査入院 体調不良のため民主党の小沢代表は9月25日午後、体調不良のため、東京都内の病院に入院した。菅直人代表代行によると、主治医に相談し、臨時国会にそなえるため2、3日検査入院するという。 >Asahi Com 2006年09月25日16時45分
主治医に相談し、臨時国会にそなえるため2、3日検査入院、と言うのは小沢側が周到に用意したコメント。真実は半月もの長きに亘る入院だったことから持病の心臓疾患は相当、進行したと見るべきだ。
それに小沢と菅と鳩山。足せばトロイカと言えないこともないが、掛け算ではプラスにマイナスをかけたら0になる、と学校で教わった。
クラインさんの指摘のように、北朝鮮問題では自民党、公明党よりも過激な対策を打ち出す一方、公明党の弱腰を叩けば、有権者の反応は大きく違ったはずだ。
それなのに3人そろって「周辺事態ではない」と結論づけた。更に負けとわかったら党本部に姿は現さなかった小沢、取材を受け付けなかった菅。まるで駄々っ子じゃないか。有権者はこういうところに嫌悪感を持つことを知らないのか。(文中敬称略)2006.10.23
251 水に落ちた小沢一郎 渡部亮次郎

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