韓国という国家はよく分からないところがある。金大中・盧武鉉の太陽政策、北朝鮮融和政策が、資金提供になり、北朝鮮の核武装を利した反省がみられないどころか、国民の60%以上が韓国の核武装に賛成しているという。その理由が奇怪である。日本を追い越してアジアの大国になるのだという。
その韓国が今度は射程1000キロの国産巡航ミサイルの開発を進め、試験発射に成功したという。一応は「テポドン」など北朝鮮のミサイル網に対抗する目的だといっているが、射程1000キロの巡航ミサイルで脅威を受けるのは日本に他ならない。何を考えているのかと言いたい。
米韓合意によって韓国の弾道ミサイルは射程300キロにとどめてある。北朝鮮のスカッド・ミサイルも射程300キロ。北朝鮮が韓国を攻撃するには、射程400キロあれば十分である。韓国にとっても同じ理屈となる。だが米韓合意は巡航ミサイルに射程規制が含まれていない。その間隙をついた射程1000キロの巡航ミサイルの開発だが、その必要がどこにあるのか。
朝鮮史をみると南の諸王朝は尚武の気風に乏しく、文官と武官から成る官僚制度をとっているが、武官の地位が低く、その意味では平和国家を志向してきた。第二次大戦後、朝鮮半島は三八度線を境にして北はソ連、南は米国の軍政下に入り、一九四八年に大韓民国が建設されて、韓国軍が建軍された。
にわか仕立ての軍隊だから数ヶ月の訓練で将校団を作っているが、お世辞にも近代的な軍隊というのにはほど遠い。曲がりなりにも本格的な士官教育が行われたのは、朝鮮戦争最中の一九五一年に士官学校に入学した第一一期生以降。
この時に韓国は、第一一期生らを前線に投入せずに後方で四年間ミッチリ士官教育を施す英断を下している。彼らが実戦の場に立ったのは、一九六六年から一九七三年にかけてのベトナム派兵。精強な韓国軍といわれる様になったのは、ベトナム派兵以降のことである。
しかし”漢江(はんがん)の奇跡”といわれた韓国の経済発展によって、韓国軍には尚武の気風が失われ、精強韓国軍が弱体化しているという。地上戦を主任務とする陸軍が弱体化するのを補うには、兵器の近代化しかない。
韓国陸軍の兵制は第一軍、第二軍、第三軍の下に、一一個軍団、二一個師団、二六個予備役師団から成っている。三八度線に張り付いているのは、第一軍と第三軍の一二個師団。その後方に戦術予備師団の八個師団が展開されている。これらの前線展開師団の兵力、装備、兵の質は良い。
だが、韓国軍の配置が首都ソウルを防衛するために、三八度線に70%も展開されていることは、戦術的にみて脆弱な布陣となっている。北朝鮮軍が一点集中で突破してくれば、総崩れとなる可能性が高い。在韓米軍は防衛戦略の常道である”戦略縦深”を唱え、防衛配置を後方に下げるよう求めたが、ソウル死守を主張する韓国軍が言うことを聞かなかった事情がある。
日本でいうなら九州から北上してきた足利尊氏軍を撃破するために、楠正成らが京都をいったん開け渡し、袋の鼠にして叩く戦略を唱えたが、後醍醐天皇の側近公家が反対して、足利軍に敗れた前例がある。
米国防総省の秘密報告がニューズ・ウイークに暴露されたことがあるが「北朝鮮軍が奇襲攻撃をかけてきたら、韓国の防衛線は二週間ともたない」としている。加えて近代化された韓国軍の装備が北朝鮮軍の手に落ちる危険性がある。対抗手段としては、米海軍が海上からトマホークなど巡航ミサイルで北朝鮮軍を叩くしかない。
このことを想定して韓国海軍が巡航ミサイルを装備するのであろうか。そのつもりなら射程500キロの巡航ミサイルで事足りる。どう考えても射程1000キロの巡航ミサイルは無用の長物でしかない。それどころか日本や中国、ロシアに懸念を与えるだけだ。
まだ研究開発の段階だから、日本が直接、脅威を感じる時期にはきていないが、未来志向の日韓友好関係を結ぶつもりなら、射程1000キロの巡航ミサイルなどは考えるべきでない。盧武鉉政権はどこを向いて鉄砲を撃つつもりなのだろうか。
252 脅威となる韓国の巡航ミサイル 古沢襄

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