256 亡命尼僧と少年僧を射殺 古沢襄

共産主義国家の怖さは、人権のみならず人命すら軽視することにある。ソ連に抑留されてシベリアの地で果てた父・古沢元のことを思うと心腸が熱する怒りを覚える。しかし二度にわたってシベリア旅行をした私は、素朴なロシア人には親しみを持っている。学生時代にロシア文学を耽読した私はロシア人を憎むことはできない。
中国に対する日本人の感情も共産中国には違和感を覚えるが、中国人には同じ黄色人種として親しみがあるのではないか。その日本人の感情を逆撫でする事件が、チベット自治区とネパールの国境近くで発生した。チベットからインドに亡命する尼僧(25)や少年僧(15)を中国の国境警備兵が、ウサギ狩りのごとく銃撃して射殺した。
日本でこのような事が起これば国民が許さない。銃撃した国境警備兵のみならず責任者の処罰を求める国民世論が澎湃として起こるだろう。北京オリンピックを控えた中国なのだが、当局は兵士が違法越境者に対し引き返すように説得したものの、「(抵抗したため)発砲した。正当防衛だ」との公式見解を発表して糊塗している。無抵抗の尼僧や少年僧を射殺した心の痛みなどひとかけらもない。北朝鮮の人権状況は言うに及ばず、これが共産主義国家の本質ではないか。日中友好はいい。だが、このような体質を変えて貰わなくては、真の日中友好は生まれない。
【北京=福島香織】9月末に中国チベット自治区とネパールの国境近くで亡命を試みたチベット尼僧(25)や少年僧(15)らが、中国の国境警備隊の銃撃を受け少なくとも2人が死亡した事件の映像が世界中で放映され、国際社会を騒然とさせている。
北京五輪を控え、「和諧(わかい)(調和のとれた)社会」構築という胡錦濤政権が提唱する“理想”の陰で行われている中国の人権蹂躙(じゅうりん)に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)も調査を開始、米国などが非難の声を上げ始めている。
映像はルーマニアの登山家、セルゲイ氏が偶然撮影したものをルーマニア民放局が14日に放映。その後、日本を含む各国でも放映され、米国の動画投稿サイト「ユーチューブ」などインターネットの映像配信で世界中を駆け巡っている。
現場はエベレストに近いチョオーユー峰のベースキャンプから見渡せる氷河。映像は9月30日早朝、氷河の上を1列に並んでネパール国境のナンパラ峠に向かって歩いている約30人の行列を見下ろすように撮影されている。警告発砲音が響いた後、次の発砲音で先頭の尼僧が倒れた。カメラは銃を構える中国兵士の姿、続く発砲で行列の最後尾の少年僧が倒れる様子、倒れた人を抱き上げる兵士の姿をとらえ、目撃した登山家の「犬のように撃ち殺された」というコメントが流れる。
セルゲイ氏がテレビのインタビューに答えたところによると、一行はチベット仏教徒でダライ・ラマ14世に会うために亡命を敢行した。セルゲイ氏は兵士の襲撃を逃れた亡命者を助け、食料や衣類を分け与えたという。
この事件について12日に中国当局は、兵士が違法越境者に対し引き返すように説得したものの、「(抵抗したため)発砲した。正当防衛だ」との公式見解を発表。1人が死亡、2人が負傷したとしている。
しかし、映像が公開されたことで、亡命者の約半分が6~10歳の子供で、無防備な状態を背後から銃撃されたことが判明。チベットの難民組織など複数の人権団体の情報を総合すると、亡命者は全部で73人で、ネパールにたどりついたのは43人。そのほかは子供を中心に相当数が当局に拘束されているという。(北京・産経新聞)

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