286 沖縄知事選が残した衝撃 古沢襄

注目の沖縄知事選だったが、自民・公明党推薦の仲井真氏が接戦を制した。
<米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題を争点とする沖縄県知事選は19日投票の結果、無所属新人で、自民、公明両党推薦の沖縄電力元会長仲井真弘多氏(67)が、新人で民主党など野党6党が推す前参院議員糸数慶子氏(59)らを破り初当選した。投票率は64・54%で過去最低だった前回知事選を7・32ポイント上回った。
仲井真氏は普天間移設をめぐり、キャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)にV字形滑走路を造る日米両政府案には反対だが、条件次第で県内移設を容認する構え。稲嶺恵一知事が提案する暫定ヘリポート案の取り扱いなどで政府と地元が一致点を見いだせれば、普天間移設が前進する見通しだ。
自民、公明両党は12日の福島県知事選敗北で失った勢いを取り戻し、安倍政権に弾みとなる。>(共同通信)
開票と同時にNHKが出口調査に基づいて結果予測していたが、僅かながら糸数氏がリードしていただけに、民主党の落胆ぶりは隠せない。小沢代表は二度にわたって沖縄入りし力を入れていたが、一度も行かなかった福島知事選では民主党が勝利したのだから、皮肉な結果となった。”小沢神話”がコケにされた様なもので、まさに複雑な心境であろう。
事前に現地から共同通信は①SACO報告から十年を経て基地問題が決着しないことに名護市民が疲労感を覚えている②ヘリ基地反対協議会は「国は基地受け入れと引き換えに振興策というアメをしゃぶらせ、地域の人間関係は分断された」といら立ちを隠さない③ある政党関係者は「もう普天間は争点ではない。有権者の視線は、国から多くの予算を引き出せるのは誰か」という・・・と伝えてきている。(KK週刊選挙情報)
しかし大方の見るところは、基地を抱える沖縄の選挙は、野党が統一候補を擁立すれば勝利してきたという”沖縄神話”を信じている。私も接戦になるが、糸数氏の方が強いとみていた。その”沖縄神話”が崩れたのだから、今度の沖縄知事選が残した衝撃は大きい。これからの沖縄の選挙は先入観を捨てて分析する必要がある。
民主党と同じように落胆したのは朝日新聞ではなかろうか。事前に行った沖縄タイムス(朝日新聞系)と朝日新聞の合同県民世論調査は①普天間飛行場の名護市への移設に「反対」と答えた人は四五%で「賛成」の三二%を一三ポイント上回った②普天間移設問題に対する関心は、「おおいにある」四一%と、「ある程度」四五%を合わせて八六%に上り、関心度は高い。
③基地の整理・縮小に対する日本政府の姿勢は、「評価していない」の六一%が「評価している」二二%の約三倍に上り、地域振興策では「評価していない」四三%が「評価する」三五%を上回るなど、政府の基地問題や経済振興策に取り組む姿勢には、総じて厳しい見方をしている・・・と知事選の焦点を基地問題に絞った。これでみるかぎり沖縄基地の完全撤廃を主張する糸数氏の圧勝すら予測される。
仲井真氏が接戦を制した後も糸数氏について大きなページを割いた。選挙の敗者にこれだけのエールを送ったのは、新聞史上初めてではないか。
<参院議員の任期が4年残り、今回の立候補は固辞し続けた。だが、野党側が候補者を一本化できずに惨敗した4年前と同じ状況になりつつあるのを見て、決意した。沖縄本島中部の読谷(よみたん)村生まれ。高校3年の時、近所の少女がパラシュートで降下した米軍の大型車の下敷きになって亡くなり、基地を意識した。
高校を卒業してバスガイドに。「多くの人が、お国のために命を落としました」。沖縄戦を美談に仕立てて語るのが当時のスタイルだった。30年ほど前、母の三回忌の席で親類から沖縄戦の話を聞かされた。母は山中を逃げまどいながら、2人の子どもを飢えで亡くした。自分の兄と姉だ。母は遺体に何日も語りかけていたという。
同じころ、生き残ったひめゆり学徒隊の一人から「あなたのガイドは真実と違う」と指摘された。沖縄戦を学び、「平和ガイド」の草分けに。「戦争につながるすべてのものに反対」が信条だ。04年の参院選では「自公」候補に圧勝した。>(朝日新聞)
だが沖縄県民は基地問題よりも沖縄振興策の方を優先して審判を下した。全国一高い失業率の県だけに現実的な選択をしたともいえる。それだけに目にみえる沖縄振興策が稼働しないと、その不満が仲井真新知事や政府に向けられるであろう。

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