298 平沼氏の復党は急転直下消えた? 古沢襄

<郵政民営化法案に反対して自民党を離れた衆院議員らの復党問題で、平沼赳夫元経済産業相は25日、岡山県津山市で開かれた会合で支持者と意見交換した。平沼氏は「熟慮に熟慮を重ねている。27日に決断する」と結論を保留した。だが、その後記者団に、「変な形で党に戻っても、何の主導権も発揮できないことも考慮しないといけない」と述べ、自民党の中川秀直幹事長が示した条件を変えなければ、復党願を出すことは難しいとの考えを示唆した。
平沼氏はこの日の会合で、「一人の幹事長が突きつけた問題(条件)をのんで、私の先行きが開かれるのか、考慮しなければならない。自民党を愛するのはやぶさかではないが、今の自民党はどこかおかしいと思う」と語った。一方、支持者からは「筋を通すべきだ」との声が多く出されたが、「無所属では戦いにくい」と復党を求める声もあった。
一方、中川幹事長は25日の広島市内での講演で、「安倍首相の本音は(無所属議員との)統一会派だ。それが困難なら国民、党員に理解と納得を得られるやり方でやってほしい。それが首相の考え方だ」と語り、平沼氏らに求めている復党のための条件は必要だとの考えを強調した。(朝日新聞)>
平沼氏の復党は急転直下消えたとみるべきであろう。平沼氏と行動をともにする造反議員も出ると思うので”平沼新党”が年内に発足するのではないか。その新党は中川幹事長がいう自民党との統一会派を組むか定かではない。むしろ自民党に対する批判勢力の色彩を強める気がする。
今度の騒動を筋論と情論で分別する解説が横行しているが皮相的見方ではないか。中川幹事長は”左”にウイングを広げることによって自民党の党勢を拡大する志向をとっている。形式は違うが民主党の小沢代表がとっているスタンスに共通するものがある。いずれも無党派層の取り込みに焦点を合わせていると言って良い。
安倍首相は保守の草の根を掘り起こすことによって、憲法改正などこれから直面する保守の課題に取り組む姿勢をみせる。そのためには来年の参院選で国民の支持を得なくてはならない。”右”にウイングを広げたいのが本音だろうが、それを当面は封印して、安倍カラーを出すのは参院選後と思い定めているのではないか。
平沼氏は明らかに”右”にウイングを広げる信念を持つ。それなくしては安倍政権が、これから直面するであろう政策課題を実現することは不可能だと思っている。復党も安倍政権の政策実現のものとしてきた。
このぶつかり合いが復党問題で表面化した。自民党の三役で中川幹事長と中川政調会長のスレ違いも根っこのところでは一種の理念闘争が見え隠れしている。政策論争なら妥協することも出来るが、理念論争では妥協点が見出し難い。
平沼氏は安倍首相が中川幹事長に取り込まれる危うさを感じ始めているのではないか。初心を忘れた安倍首相と見定めれば統一会派の選択肢は無くなる。そのギリギリのところで自らの政治行動を考えているかにみえる。
「一人の幹事長が突きつけた問題(条件)をのんで、私の先行きが開かれるのか、考慮しなければならない」と言ったのは、その観点でみた方がいい。平沼新党にまで踏み切れば自らの理念に共鳴する同志を勝敗を度外視して参院選に立てることもあり得る。私にはその方向に事態が進展する気がしてならない。安倍自民党と小沢民主党の対決図式に平沼新党が割って入れば、参院選も思わぬ展開をみせるかもしれない。

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