郵政造反議員の復党話はドタバタ劇を演じて世評は芳しくないが、一応はヤマを越したとみるべきであろう。このドタバタ劇で男をあげたのは誓約書の提出を拒絶して無所属にとどまった平沼赳夫議員だとすれば、評判を下げたのは最後まで顔が見えなかった安倍首相だったのではないか。
沖縄知事選から短期日でスピード処理できたという評価があるが、私は必ずしもそう思っていない。復党条件を小出しにエスカレートさせて、最後には「誓約に違反した場合、議員辞職する」という条件まで付した。復党に反発する議員や党員をなだめ、世評の反発をかわす便法だったのであろうが、この小出しのやり方がドタバタ劇の印象を深めたことが否めない。
誓約書は昨年の総選挙で公認候補に書かせたものと同じだという。それなら尚更のこと最初から誓約書の内容を明らかにして復党条件とすべきではなかったか。それをしなかったから中川幹事長が少しずつ復党のハードルをあげて、一種の”いじめ”をしている印象さえ与えてしまった。
世評は各社の世論調査によるところが大きいが、調査対象は自民党支持層のみならず野党の民主党、共産党、社民党支持者も含まれている。復党に批判的意見が高くでるのは当然であろう。自民党支持層も小泉チルドレンを支持した層は、これまた批判的となる。だからといって小泉チルドレンを支持した層が雪崩をうって民主党支持に流れるだろうか。
復党話は第一義的には自民党内の問題なのだから地方を含めた自民党支持層の動向が、どのようなものになるかを対象にすべきであって、第二義的には野党支持を含めた一般の動向がどうであったか、という順番になる。
毎日新聞の世論調査は回答者の政党支持別で分析した。野党を含めた一般の回答は70%が復党に反対意見をとっている。これを自民党支持層でみると50%を上回る批判意見がでて、復党支持を大きく上回った。これは現時点でみるかぎり順当な結果ではないか。
問題はこれからである。世論調査というのは一回こっきりでは動向が分からない。来年になれば二度、三度の調査を各社がやるであろう。その時に50%を上回った自民党支持層の批判票が、さらに増えれば参院選に赤信号が灯る。減るとしても、その減り方が少なければ黄信号であろう。参院選を前にして安倍首相は国民の目を惹きつける手を打たねばならぬ。復党問題のマイナス・イメージをうち消す手は何か?
<十月十日夜、国会近くのホテルで安倍首相は「秘書官との食事」名目でホテル内の中国料理店に入ったが、ひそかに別室に移って、青木参院議員会長、森元首相、中川幹事長と四者会談を行った。この席で「参院選に勝つためには造反議員の復党が必要」と説く青木氏に安倍首相もうなづいた。この瞬間に復党方針が決まった」と杜父魚ブログに書いたのが11月23日。各社とも28日の朝刊で極秘会談の存在を報じている。>
安倍首相が復党のゴーサインを出した時点で、復党の波紋が描くリスクを覚悟しなければならぬ。中川幹事長も同じ懸念を抱いたのであろう。復党のハードルをあげる発言がエスカレートした。世論の反発を和らげる配慮が働いたと思う。
だが復党問題の枠内であれこれ策を練っても後ろ向きではないか。その迷路に入り込むべきではない。リスクを冒して復党承認に踏み切った以上、この問題を超えた政策を打ち出し、参院選で国民の信を問うことが必要がある。その考えなしに復党問題に手を染めたというのなら、安倍内閣の存在理由がなくなる。そうではあるまい。
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