相変わらず北京の伊藤正氏(産経新聞)の中国分析は優れている。チャイナウオッチャーの第一人者といわれる由縁である。共同通信社外信部の時代から注目してきたが、心から声援を送りたい。
6カ国協議の行方について私が論じるよりも伊藤氏の記事を読んで頂く方がよい。①中国の外交的失敗を意味し、その威信は大きく損なわれた②仮に米朝間で何らかの妥協が成立しても(北朝鮮が)核放棄に応じることはないと6カ国協議への戦略見直しが必要③北朝鮮が核の再実験に踏みきれば(中国の北朝鮮政策の)状況は一変するだろう・・・と明快に指摘している。
【北京=伊藤正】6カ国協議が北朝鮮の「討議拒否」により、何の進展もなく休会したことは、中国の外交的失敗を意味し、その威信は大きく損なわれた。核問題の平和的解決を目指す6カ国協議は大きな壁にぶつかり、議長国として協議を率いてきた中国は、基本戦略の見直しを迫られようとしている。
中国の専門家筋は、北朝鮮が10月に核実験を実施した後、「状況が変わり6カ国協議は意味を失った」と述べていた。北朝鮮が「核を放棄することはあり得ず、核放棄を前提にした共同声明(昨年9月)は、駆け引き材料に使われるだけ」だからだ。
2002年秋に「核疑惑」が発覚して以来、北朝鮮は、食糧、エネルギーなどの支援を受ける中国のカオを立てる形で、03年4月の米中朝協議を経て同8月から6カ国協議に応じてきたが、その間、核開発に全力を投じてきたとされる。
これに対し、中国の専門家や当局者の間には懸念の声が早くからあったものの、中国政府は当初から平和解決を主張、関係国も同調した。北朝鮮は6カ国協議を核開発の時間稼ぎに利用したばかりか、しばしば出席拒否姿勢を示して主導権を握ってきた。
中国にとって6カ国協議は、国際社会に外交的威信を示す場でもある。北朝鮮を協議の場に引き出す影響力を持つ唯一の国であり、その外交努力に関係国は称賛を惜しまない。北朝鮮の「核保有」で困難さを増した協議再開も、中国の工作が奏功した結果だった。
中国は核実験直後、唐家●(=王ヘンに旋)国務委員ら3人の党中央委員を北朝鮮に派遣、協議復帰を説得。米国の金融制裁解除を要求する北朝鮮の意を受け、10月下旬には米朝直接対話を設営、北朝鮮の協議復帰の同意を取った。
ある中国の専門家は、北朝鮮が協議に応じたのは「米国の制裁が効いた表れであり、北朝鮮が制裁解除だけを目的に協議に臨んだのは明白」と指摘。仮に米朝間で何らかの妥協が成立しても、核放棄に応じることはないと6カ国協議への疑問を提起し、戦略見直しが必要と強調した。
しかし、中国は当面、6カ国協議による平和解決路線は変えないとみられている。東アジア戦略で北朝鮮への影響力保持が重要なためだが、北朝鮮が制裁解除に失敗、核の再実験に踏みきれば、状況は一変するだろう。(2006/12/23 08:41)
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