ある総理大臣が不能になった衆院議長を「マシュマロ君」と言ったのは冗談にしても失礼だが、江東区が精神薄弱者の作業所に翌檜(あすなろ)と名づけたのは残酷すぎないか。
明日は檜になろうとしても絶対なれないのが翌檜の意味。さも希望があるように見せるのはどうか。我々は根拠も無く明日に希望を見出そうとするが、翌檜に明日は絶対無いのだ。だから残酷だと言うのだ。
広辞苑によると「翌檜 (「明日は檜になろう」の意)ヒノキ科の常緑高木。5月ごろ花を開く。果実は楕円形の球果。材は建築材、船材、枕木など。木曾の五木の一つ。別名ひば、しろび、あて、あすひ、あすはひのき。
翌檜は実は東北地方の木である。つまり東北には檜は生えない。檜より価値において低い翌檜しかない。正確ではないが能登半島以北には翌檜(ヒバ)しか生えないと聞いたことがある。
<アスナロ(明日檜:翌檜) False Arborvitae ヒノキ科の常緑高木の1種。山地の尾根筋などの乾燥地や、湿地の周辺などに生え、乾湿両極端の環境に適応し、日陰にも強い。
アスヒ、オニヒノキ、オニヒバともよばれる。和名のアスナロは、「枕草子」にもみられるように「明日はヒノキになろう」という意味だと俗にいわれるが、その名の由来は、ヒノキに比較して葉が厚いという意味で、アツバヒノキとよばれ、それが「明日はヒノキ」→「明日はヒノキになろう」→「明日なろ」と転じたものともいわれる。
日本の固有種で、本州および四国、九州に分布する。
木材は水湿に強く、腐りにくい。木目は美しいが、特有の精油成分による異臭が一般には好まれない。建築や土木、家具、船舶、車両、桶(おけ)などに用いられる。木曽地方では、ヒノキやサワラ、クロベ、コウヤマキなどと共に「木曽の五木」のひとつに数えられる。
アスナロの変種であるヒノキアスナロは、ヒバともよばれ、球果がややまるく、北海道の渡島半島以南、本州北部に分布する。青森県の下北半島、津軽半島にはヒノキアスナロの純林があり、秋田のスギ林、木曽のヒノキ林とともに日本三大美林の一つに数えられる。>
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1936年生まれの私が「あすなろ」という名に初めて接したのは井上靖の小説「あすなろ物語」であるが、それが「ひば」のことだとは知らなかった。
インタイネットで調べてみると昭和28(1953)年の「オール読物」(文藝春秋社)の1月~6月号に連載された作品だった。少年の成長記のような小説だった。「明日なろう」とはなんとなく希望の持てる感じを受けた。それは確かである。
しかし東北では「あすなろ」なんて言わない。みんなが「ひば」と呼び、青森県が名産地である。きわめて耐陰性が大きいところから門扉に用いられる。
東北を僻んでいる人は「いや、檜に劣るような事は断じてない」と頑固に明日は檜になれるのだと言い張る。終いには百科事典の執筆者が知らないのだといい始めた。
<ヒノキ(檜) False Cypress 美林と高級材で知られるヒノキ科の常緑針葉高木。和名は「火の木」の意味で、昔、この木をこすりあわせて火をおこしたことによる。
ヒノキは福島県と新潟県以南、九州の屋久島までの山地に自生の分布を持つが、重要樹木のために植林が各地で盛んに行われていて、丹精をこめた育成と管理により、美しい樹林を作り出している。
とくに木曽のヒノキ林(→ 木曽川)は古い歴史を持ち、秋田のスギ林、青森のヒバ(ヒノキアスナロ)林とともに、日本三大美林とよばれることも多い。
高さはふつう20~30m、大きいものでは50m、幹の直径2mにもなる。材は、加工しやすい、ゆがみにくい、年を経ても強度が落ちないなど、すぐれた性質がある。このため古くから木材として使われてきた。
1300年前に建てられた法隆寺はその殆どにヒノキ材を使い、建築物以外でも仏像などの材料になった。現在でも、様々な建築部材に使用されている。>Microsoft(R) Encarta(R) 2006. (C) 1993-2005 Microsoft Corporation. All rights reserved.
檜と翌檜。似て非なるものなのだ。明日ヒノキになる事は絶対かなわないのだ。2006.12.23
347 翌檜とは残酷な 渡部亮次郎

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