349 ヴィヴァルディの「四季」で味噌醸造 古沢襄

杜父魚ブログをご夫婦でご愛読頂いている広島県の方から珍しい味噌と醤油を頂戴した。「ますやみそ」・・・北海道産大豆と国産大麦・国産コシヒカリ米、「沖縄の塩シママース」を使用し、ヴィヴァルディの「四季」を聴かせながら愛情をこめて造り上げた呉市のお味噌である。ご主人とはシベリア墓参旅行で苦労したお仲間。喜んで頂戴した。
酒仕込みの際に蔵の中にオーデイオを持ち込み”もろみ”に音楽を聴かせた人の話を聞いたことがある。流した曲はバッハのオルガン曲、チエンバロ曲などのバロック音楽。バロック音楽には一時凝ったことがあるので興味を持った。
牛舎に音楽をかけてみたら牛乳の収量が上がったとか、花に聞かせてみたところツルがスピーカーをぐるぐる巻きにしたとか、野菜が大きくなったという話は結構ある。
犬が音楽好きという話もある。松下幸之助氏が経営難の日本ビクター株式会社を傘下の子会社として引き受けたのは、蓄音機に耳を傾ける犬(ニッパー)とキャッチコピー “His Master’s Voice” に惚れ込んだという逸話がある。その日本ビクターも二、三日前の新聞で身売り話がでている。
愛犬バロンはフランク永井の演歌好き。分かるのか、分からないのか定かでないが、騒いでいたのが急に大人しくなる。”霧子のタンゴ”などはうっとりとして聴いている。犬は一定の周波数やリズムに対して敏感に反応する習癖がある。消防車のサイレンに反応して遠吠えする犬が近くにもいる。

犬や牛が音楽に反応するのは理解できるが、酒造りや味噌造りに音楽が使われるのは不思議だと思う。音楽が鳴り渡る部屋の空気振動が、”もろみ”などに宿る微生物の増殖に影響を与える、という説がある。だが科学的な証明ができなくても、心が豊かになる話ではないか。
わが家では大豆と米を発酵・熟成させた自家製の「米みそ」を久しく造っていた。梅雨時に一年分の味噌をカメに造るのだが、最初は良くても終わり頃には黒ずんで味が落ちる。数年前に自家製の味噌造りはやめた。それ以来、市販の味噌をあれこれ選んで使っているが、なかなか気にいった味噌には会えないでいる。
味噌といっても東日本と西日本では麹が違う。東日本は米麹、西日本は麦麹が主流なのだが、麦麹には独特の甘味がある。鹿児島で麦麹だけの味噌汁を頂いたが、その甘味が気になった。博多には三年間いたが、毎月東京本社で支社長会議があったので、帰りには信州味噌を買ってきた。
米みそも仙台味噌は、信州味噌より辛味がある。信州味噌は淡泊な味といえよう。だが九州各地の味噌汁をご馳走になる度に、信州味噌の淡泊さが物足りなくなってきた。今では信州味噌は敬遠している。麦麹と米麹を配合した味噌が一番うまいのではないか。
味噌の主成分となる大豆にもこだわりがある。戦前は満州産の大豆がよく使われたが、戦後は米国産の大豆が主流。ロス埠頭で日本向け大豆の積み込み作業を見学したことがある。船旅だから船倉の大豆が蒸れてしまうのを防ぐ目的だろうが、何かを噴霧している。防腐剤なのか、農薬なのか知らないが、嫌な気分になった。
自家製の味噌にこだわったのは、それが原因。大豆は国産物を使うようにしていた。だが「米みそ」だったので、味がいまいち。麦麹と混ぜるところまで知恵が回らなかった。防腐剤がかかっていても、よく洗えば問題ないと勝手に解釈して市販の味噌を使うようになった。
呉市の「ますやみそ」は、私がこだわった条件をすべて満たしている。毎日の味噌汁が楽しみになった。ノロ・ウイルスが気になるが、今夜あたりは久しぶりに好物の牡蠣鍋を食べようと思う。

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