アメリカのクリントン前大統領が電撃的な平壌訪問をする噂がワシントンで囁かれているという。「ほんまかいな?」と言いたくなる。ブッシュ政権の北朝鮮政策は、中国頼みの面が覆い隠せないが、それでも金融制裁は確実に金正日総書記を追い詰めてきた。その時にクリントンが訪朝すれば、後ろから鉄砲を撃つことになりはせぬか。
魑魅魍魎が跋扈するのは永田町だけではないようだ。ワシントンも同じだという。ブッシュ政権の余命はいくばくもない。上下両院で共和党を圧倒した民主党は、来るべき大統領選で民主党大統領が誕生できると自信を深めている。そのためにはアジア政策でブッシュと違う大胆な転換をみせるのだという。クリントン訪朝の前に民主党の上下両院議員団が平壌入りする噂もあるそうだ。
追い詰められている金正日に塩を送るようなものだと思うのは、島国の日本人的な感覚なそうだ。アメリカが怖れているのは、このまま六カ国協議が行き詰まり、北朝鮮が米本土に達するテポドンに核搭載ができることだという。それこそサンフランシスコが核攻撃を受ける悪夢がよみがえる。それをさせないためには、金正日に核放棄を迫るのではなく、テポドン開発の凍結を求めるのが先決という米民主党の外交戦略がかいま見える。
これでは北朝鮮に対して厳しい態度で臨んでいる日本の安倍外交が、コケにされてしまう。足元では山崎前副総裁が「対話と圧力というが、安倍外交は圧力一辺倒で、対話のパイプが欠けている」と批判して、悪評さくさくの訪朝をやってのけた。
山崎氏は昨年七月に訪米した時に北朝鮮と関係の深いジャーナリストと極秘に会ったという。私は文明子女史ではないかと思っているが確証はない。しかしワシントンの底流で米民主党の動きについて何らかの感触を掴んだと私はみている。帰国して中国の王毅駐日大使とも会った。米中合作のシナリオで山崎氏が動いた可能性がある。そうでなければ、山崎氏の訪朝は、ピエロの馬鹿踊りになる。
さし当たっては22日にニューヨークで行われる米朝金融協議の行方であろう。ブッシュ外交の北朝鮮政策が大きく転換するとは思えないが、この後に六カ国協議が間を置かずに開かれる事態を迎えれば、水面下で米朝・米中間で何らかの進展があったとみるべきでないか。日本だけが蚊帳の外になってはならない。
安倍首相の周辺も、この動きは承知しているという。だが、米大統領選で民主党大統領が確実に誕生するとは決まっていない。共和党候補が勝つ可能性も残されている。当面は北朝鮮に対する厳しい外交姿勢を貫きながら、米・中・韓の動きをみているところであろう。それにしても安倍訪米がまだ実現していないのは気になる。ヨーロッパ歴訪もよいが、ブッシュ大統領と忌憚のない話し合いが必要な時期にあるのではないか。日程的に難しいとすれば、小泉前首相の訪米特使派遣も考慮してよいのではないだろうか。
377 クリントン訪朝?ほんまかいな 古沢襄

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