早とちりをしてはならないが、22日にニューヨークで行われる米朝金融協議で新しい動きが出る可能性が出てきた。ワシントンからのロイター通信は、米国の金融制裁によりマカオの銀行バンコ・デルタ・アジアで凍結された北朝鮮口座の一部を解除できるかどうか、ブッシュ政権が検討していると伝えている。北朝鮮が核放棄を約束する前に米側が一部とはいえ、口座の凍結解除をすることは大きな譲歩と言わねばならぬ。山崎拓氏が「それみろ」と得意満面の顔をみせる様子が目に浮かぶ。
ワシントンの裏で米中合作のシナリオが動いている可能性を指摘してきた私だが、その根拠は何かと問われれば①あれだけ米朝金融協議の場をニューヨークにすることを拒否して北朝鮮が、ニューヨークまでノコノコと出てくることになったのは何故か②訪朝後の山崎発言は自信たっぷりだが、北京で武大偉外務次官と会った際に、米側に妥協の動きがあることを知らされた可能性が高い③平壌でホテルではなく招待所に宿泊させられて、外部との接触を絶たれた理由は何か④この時期にチェイニー副大統領が訪日するのは何故か・・・といった点である。
だが一直線に米朝合意に漕ぎ着けるかというと即断できない。来日しているボルトン前国連大使は「六者協議はあまり役立っていない。繰り返しても北朝鮮が核開発を進めるだけだ」と久間防衛相に米朝合意に否定的な見解を述べている。「タカ派だから米朝合意に否定的なのさ」と斬り捨てるのは勝手だが、チェイニー副大統領もタカ派。
もしニューヨークの米朝金融協議で北朝鮮側が欲をかいて、さらなる譲歩を米側に迫ったらどうなるか。米側は一部の制裁解除という”名”を北朝鮮に与えても、金融制裁の”実”は北朝鮮が核放棄を約束するまで与えるつもりはないであろう。形だけの一部制裁解除で北朝鮮が六カ国協議に応じて、核放棄の話し合いがトントンと進展するだろうか。米側が北朝鮮の核開発凍結を求め、テポドンの実験放棄で妥協するつもりなら別である。これは核開発凍結といいながら核保有の現実を容認するに等しい。
米朝ともに高いハードルが目の前にある。強かな北朝鮮のことである。この交渉は虚々実々の駆け引きになるであろう。拉致問題を抱える日本にとっては、もう一つのハードルがある。したがって予断を許さない交渉になっていることを認識せねばならぬ。ボルトン氏のいう否定的見解にも注意しておく必要があるのではないか。
拉致の家族会にとっても難しい局面を迎えた。一部には山崎訪朝を評価する声もあるという。だが大勢は対話より圧力という従来方針を変える空気はない。安倍首相にとっても難しい局面を迎えている。
383 北朝鮮口座の一部を解除があるのか? 古沢襄

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