中国の権力構造で何らかの異変が起こっている可能性を私は指摘してきたが、昨秋来、北朝鮮の権力構造でも同様の兆候がある。26日のソウル発ロイターは次のような情報を伝えている。
<韓国統一省は26日、北朝鮮の金正日労働党総書記が病気に陥っているか、あるいは軍部が総書記に対する謀反を企てた可能性があるとする報道を否定した。この報道は、時事通信が韓国筋の情報として伝えたもので、金総書記は現在、北朝鮮東部の元山にある別荘で軟禁下にある可能性があるとしている。
韓国統一省当局者は匿名で「報道を裏付ける情報は一切得ていない。異常な状況はみられない」と述べた。これとは別に韓国の情報筋もロイターに対し、時事の報道には「信憑性がない」と語った。塩崎官房長官は報道について質問され、そうした情報は得ていないと述べた。>
昨秋に在ドイツのクライン孝子女史が、ロシア筋の情報として金正日死亡説をキャッチしている。
<勤務の特性上中国共産党の高官と接触することが多いので飲み食いの席では色々の情報を得られるのですが、そんな中でつい二十日ほど前に興味深い情報を得ました。その情報とは、北朝鮮の金正日の消息に関するものですが、その高官によれば、金正日は先月の中頃にロシアの病院で手術中死亡したようです。
今月の初めに、北朝鮮高官が密かに訪中したニュースは韓国系のメディアから流れ、中国政府もこれを公式に認めておりますが、その訪中の意味は、人民軍の圧力があり金正日後継を独力では決められない労働党が、中国共産党に人民軍に対影響力行使を打診するためのものであったようで、原則的に中国政府、人民解放軍首脳はそれを了承したとのことです。>
時期を同じくして私が得た情報は軍部の若手軍人が実権を握ったという情報であった。その筋は金正日の後ろ盾だった趙明録・共和国国防委員会第一副委員長が八十五歳の高齢のうえ病床にある。最側近といわれた金英春・人民軍総参謀長に代わって軍部の若手実力者が登場して、病気の金正日は軟禁状態に置かれているというものである。この情報と時事情報は奇妙に一致点がある。
<【ソウル25日時事】北朝鮮の情報に詳しい韓国の消息筋は25日、北朝鮮の金正日労働党総書記の身辺に最近、何らかの異常事態が発生したとの情報があることを明らかにした。金総書記は現在、平壌には不在で、総書記の側近グループ内で激しい抗争が繰り広げられているという。米韓などの情報当局も確認作業を進めているもようだ。
同筋は、金総書記の健康状態に何らかの問題が起きた可能性を示唆。このほか、軍部の軟禁下にあるとの情報も出ているという。金総書記は日本海に面した北朝鮮東部の元山に滞在しているとの見方もある。元山には金総書記の高級別荘があるとされる。
情報の真偽は今のところ不明だが、事実であれば、金総書記を絶対的なトップとした北朝鮮指導部に「権力の空白」が生まれ、指導部の体制に大きな影響を及ぼすことは確実。ただ、韓国政府当局者は「特異な兆候は把握していない」として、情報の信ぴょう性に疑問を呈している。>
また時事通信は追加情報として次のように伝えた。
<北朝鮮の金正日労働党総書記の身辺に異常事態が起きたとの情報について、在京情報筋は25日、昨年9月に北朝鮮人民軍が首都・平壌で粛清を行い、金総書記の一族の中に逮捕者が出た可能性があると語った。拘束された者の名前などは明らかでない。
情報筋は、北朝鮮の実権を握りつつある軍の内部や側近の勢力争いが秋以降起きているもようだと述べた。金総書記のめいに当たるクムソンさんが昨年夏、留学先のパリで変死したと伝えられたことも、こうした異変と関係があるといわれる。
しかし、同筋は「情報が外部に漏れ始めたことからみて、異変に決着が付いた可能性もある」と指摘した。>
昨秋来、このような金正日情報が流れているのは、やはり何らかの異変があったとみるべきであろう。火のないところには煙が立たない。ただ極端な情報鎖国の国家であるから、いずれも憶測の域をでない。仮にクーデター計画があったとしても、未然に鎮圧された可能性もある。
気になるのは後継者レースから脱落したとみられていた長男の金正男復活説がでていることである。軍部が実験を握り、金正日が病気を理由に元山の高級別荘に隔離されているとすれば、本命視されていた金正哲、金正雲の可能性が薄れる。あるいは中国軍部や若手軍人によって金正男が登場することがあるのかもしれない。
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