北京で行われている六カ国協議が安倍内閣の命運を決めるといったら多くの人は奇異に思うであろう。日本は北朝鮮の核放棄に向けた核関連施設の稼働停止など「初期段階の措置」については各国と歩調を合わせていくことには異論がない。
しかし、その見返りとして北朝鮮がエネルギー・食糧支援を求め、各国が日本にも共同歩調をとることを要求すれば、極めて重要な選択肢に直面する。日本にとって最優先課題である拉致問題で進展がない限り、たとえ米国や中国から説得されてもエネルギー・食糧支援を行うことは出来ない。塩崎官房長官は日本の立場について連日のようにサインを送り続けている。
日朝国交正常化を最優先課題としている山崎自民党副総裁は、拉致問題で進展がなくても六カ国協議で北朝鮮に対するエネルギー・食糧支援が決まれば、日本も受け入れるべきだと唱えている。そうでなければ六カ国協議の場で日本は孤立し、ひいては日米関係、日中関係にも悪い影響を与えるとしている。
国内的にみれば山崎氏の考え方は少数意見に過ぎない。だが日本の拉致問題について世界各国が共通の認識を持っているとはいい難い。それでも日本が拉致問題の未解決を理由にエネルギー・食糧支援を拒めば、六カ国協議で孤立するのは避けられないであろう。
北朝鮮は日本を非難し、韓国、中国、ロシアも不快感を示すであろう。米国は日本に対して距離感を持つかもしれない。私のみるところ安倍首相は、そのリスクを冒しても拉致問題で安易な妥協はしないと腹をくくったと思っている。
このような状況になった時に、野党は安倍内閣の無策と外交的失敗を突いてくるに違いない。山崎氏は「安倍内閣は六カ国協議への取り組み姿勢で取り残された。米朝和解に動いた米国の変化に気づくのが遅過ぎた」と批判している。マスコミも安倍批判に動くかもしれない。
それでも安倍首相は日本にとって拉致問題が最優先課題だとする信念を曲げないであろう。外交は優れて内政問題である。国際的な思惑よりは自らの信念に忠実であろうとするに違いない。妥協をすれば安倍内閣の存在意義がなくなるからである。選択肢はひとつしかない。それを国民世論はどう受けとめるか?安倍内閣の命運を制するのは世論といわねばならない。
418 安倍内閣の命運を決める北朝鮮支援 古沢襄

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