予想通り北京における六カ国協議は難航している。その原因のひとつは日本の態度にある。日本は拉致問題の解決なしには、北朝鮮に対する見返り支援をする立場にはない。安倍首相は安易な妥協はしないと強い態度をとっている。
北朝鮮の朝鮮中央通信は九日「六カ国協議に参加する資格すらない日本が、拉致問題を基本的な協議事項だと主張しているが、全く滑稽な話であり、不快感を感じる話でもある」と日本攻撃を露わにしている。
さらに北朝鮮側は「日本の誤った戦略的行動のために六カ国協議が混乱状態に陥り、実質的な成果を導き出せず失敗に終われば、国際社会は日本のそうした政治的行動を許さないだろう」と日本の孤立化を狙う挙にでている。
中国の新華社通信も九日「六カ国協議における不確定要素」と題する論評で日本の態度を非難している。北朝鮮の核問題を巡る六カ国協議で、日本が北朝鮮への見返りのエネルギー・経済支援の前提として、拉致問題での進展を掲げていることは「各方面が期待する具体的成果の獲得を妨げる可能性がある」と非難した。
論評は「協議の不確定要素とは、日本が朝鮮半島の非核化問題を解決するための六カ国協議で、拉致問題を一緒に議論しようとしていることだ」と指摘。日本がそうした主張を続ければ「北朝鮮が現在の立場を後退させることにつながり、六カ国協議の進展にも影響するだろう」と強調し「現在の協議の成果についてもあまり楽観的になれない」と日本に対して警告した。
予想された通りだが、この非難に臆する必要はない。六カ国協議が仮に不調に終わっても拉致の被害を受け、日本に照準を合わせたノドン・ミサイル200基を喉元に突きつけられている日本は、少なくとも拉致問題で北朝鮮が誠意をみせないかぎり妥協の余地はない。
以前の自民党流でいけば、新たに設置される日朝の作業部会にこの問題を先送りする手法が考えられる。しかし拉致問題は解決済みと主張している北朝鮮は、作業部会の議題に拉致問題を乗せることを拒否するであろう。
北朝鮮は作業部会の議題は日朝国交正常化と日本の経済協力に議題を絞り、日本から金を絞りとることしか考えていない。ノドン・ミサイル200基の撤去にも応じる筈がない。先送りすれば日本の立場は、さらに弱くなる。対抗手段として日本の核武装論まで誘発しかねない。
日本にとって拉致問題は譲れない一線である。米朝が裏でどのような取引をしようとも日本は譲れない一線を守らねばならぬ。北朝鮮の脅威を直接受けているのは日本に他ならない。その立場を鮮明にして、孤立するならやむを得ないと腹をくくる時ではないか。
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