426 拉致問題解決と世論調査 古沢襄

世論調査というのは設問の仕方によって結果の数値が大きく変わってくる。のっけから朝鮮半島の非核化に賛成か反対かと問えばほぼ100%が賛成と答える。北京で六カ国協議がまとまったことに賛成か反対かと問えば大多数が賛成というに決まっている。
設問の第一は「北京で六カ国協議が行われたのを知っているか」と聞くべきであろう。多分60%程度しか知らないと思う。40%は無関心ではないか。
次ぎに60%に対して核問題を優先して解決すべきか、拉致問題の方を優先させるか、と聞いてみる必要がある。間違っても核も拉致も重要という第三の設問を立ててはならない。二者択一の質問に対して、国民の意見がどう分かれるかに興味がある。
私は核問題に関心を持つ回答がかなり出てくる気がする。意見は分かれるであろう。ついでに40%に同じ質問をすれば、拉致問題の解決と答える回答が圧倒的に多くでてくる気がする。
拉致解決よりも非核化を優先して望む回答が多くなるとは思えないが、30%ぐらいでてくれば、それは日本の安全保障について、かなり深刻な危機意識を持つ層が形成されてつつある証拠となる。平和ボケといわれた国民意識に変化の兆しがでていると思わねばならない。
この層に対して北朝鮮が完全に核放棄すると思うか、と質問すれば、そうは思わないという回答が多く出ると思う。さらにミサイル防衛網を早急に構築する必要性の賛否を問えば、この軍事的な防衛手段には賛否が分かれる気がする。それよりも外交手段で危機回避を望む回答の方が多く出るのではないか。
そう上で日朝国交正常化を急ぐべきか、という設問を立ててみたい。これは意見が分かれるであろう。拉致問題の解決なしには日朝国交正常化はありえないという意識が浸透しているからである。といって拉致問題が解決に向かう兆しはみえないから、回答者の方も困惑するのではないか。
追い打ちをかける様だが北朝鮮に対する経済制裁をさらに強化するのか、非核化に応じて制裁を緩めるのか、という設問をしてみたい。これも現状維持の設問を立ててはならない。二者択一の回答を求めるべきである。回答者はまさに困惑するであろう。
六カ国協議の結果、安倍首相は日朝国交正常化をエサにして拉致問題の進展を図る戦略を立てたと私はみている。そのせめぎ合いが始まろうとしている。世論調査も新しい視点で設問を立てて、国民意識の動向を探る必要がある。

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