428 参院選敗北で辞任するいわれはないと小泉氏 古沢襄

三年前の第二十回参院選の資料を読み直しているが、小泉前首相の強烈なキャラクターには驚かされる。高支持率をキープした秘訣を「小泉本人が決して動じないところだ」と与党幹部は口を揃えて言っている。改革の後退や見通しの甘さを認めることは皆無だ。
道路公団改革では民営化推進委員会のメンバーから辞表が出る騒ぎとなったが、小泉氏は「まれにみる画期的大改革だ」とシレッとして言い放つ。イラク戦争の大義とされた大量破壊兵器が発見されなくても「開戦支持は今でも正しかったと思っている」と髪をふり乱して獅子吼していた。
側近は「歴代首相が何につまずいて、退陣したかを研究して、知り尽くしている」という。一貫して主張し、発言がブレないことが必要だというのが小泉哲学。政策より”政局”の方が好きと堂々と豪語していた。
最近の小泉氏はいっさい喋ることをしない。訪朝して帰国した山崎前副総裁とも会おうとしなかった。「何も言わずに沈黙を守ることが、安倍首相に対する最大の援護射撃」と側近は解説している。だが電話という武器がある。安倍・小泉のホットラインで、ことあるごとに安倍首相は小泉氏に相談しているとみた方がいい。
小泉政権は二〇〇四年参院選を前にして、首相退陣論が出ていた。もう三年も総理をやったのだから、首相の役割は終わり、内閣の求心力が急速にしぼむという根強い見方があった。小泉支持率も三年間で80%台から40%前半まで急落していた。
青木参院幹事長(当時)は56議席以上を獲ると強気であった。一九八九年参院選で失った単独過半数を十五年ぶりに回復するのが悲願。目指すは56議席以上であって、現有51議席を切ることなどは想定外だった。だから、51議席を切れば首相は退陣せざるを得なくなると檄を、飛ばした。そんなことはあり得ないと踏んだうえでの、檄である。
だが小泉首相と周辺は各社の世論調査を分析して「51議席を切っても辞任しない」「政権を選択する選挙は総選挙であり、参院選敗北で首相が辞任するいわれはない」という方針を立てている。参院選敗北で退陣した宇野元首相、橋本元首相を前例にしないという宣言でもある。このあたりの小泉氏の動物的カンは冴えている。
三年後の二〇〇七年参院選は似た経過を辿っている。青木参院議員会長は連立与党で過半数制覇を唱えて、過半数を割れば安倍内閣の危機と訴えている。安倍内閣の支持率は40%前後まで低落した。だが小泉氏は「政権を選択する選挙は総選挙であり、参院選敗北で首相が辞任するいわれはない」と安倍首相に言っているのではないか。
この当時、小泉支持率は低落したとはいえ民主党の岡田代表を大幅に上回っていた。安倍内閣の支持率は下がったが、それでも民主党を遙かに上回っている。似たような現象が生まれているといって良い。問題は小泉前首相のように強気になれるか、ということであろう。閣僚の首ぐらいバッサリと斬ってみせてほしい。

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