434 茶・ちゃ・しゃ 渡部亮次郎

先輩古澤襄さん(元共同通信社常務理事)から「茶」の話を教えられたので、ロシアでも「ちゃ」(「ティ」だが「チィ」と発音しないと通じない=古沢注記)、アラビア語でも「しゃ」みたいだった事を思い出していた。
外交交渉でお茶の出ることはない。ビンに詰まった水が普通である。毒入りと気を廻されるのを避けるためだろう。よほど親しくならないとお茶もコーヒーも出ない。
今はともかく、昔は見ず知らずが出合うわけだから、毒を盛られない保証はない。それだから女房を人質に連れて行った。いまはそれを物見遊山代わりに連れて行ったと誤解する人が多い。
 
百科事典によると「ちゃ」も「ティ」も中国語。「ちゃ」が広東語、「ティ」が福建語だそうで、「ちゃ」は日本語、ポルトガル語、ヒンディー語、ペルシャ語、アラビア語、ロシア語、トルコ語に流れた。「ティ」はオランダ語、ドイツ語,英語、フランス語に反映したが、17世紀の中ごろ以前にはなかったそうであるから中国から茶が入ってからの言葉だと推測される。
 
モスクワの郊外に迎賓館が5棟建っている。その1号迎賓館は2階建てで、中にステンレスのだるまストーブみたいなのが鎮座してたが煙突はなかった。
恥かしながらそれがサモアールと称するロシア式紅茶沸かし装置とのことだった。明らかに秘密警察派遣とおぼしき中年女性がいたが、紅茶を淹れてくれることは5日間の滞在中、1度もなかったのは当然である。
あとで聞くとロシアでは紅茶にジャムを入れるのが普通だそうだ。だから娘さんは結婚後急に太るのだ、というのはウソだろう。
 
冬だったからか冷蔵庫には製氷皿がついてなかった。ビールは外で冷やした。冷えすぎに注意だった。水割りの氷は雪を換わりにした。
 
モスクワからアラビア半島に渡ったら、焦熱の地。ここでは「しゃ」はコーヒーだった。杯のような小ぶりな陶器に金属製の容器から注ぐのだが50センチぐらい離れたところから狙うので、こちらはやけどしないかと心配すると、肌の黒いボーイは白い歯を見せて大丈夫、私はプロです、みたいに笑った。
どこへ行っても「しゃ」が出たが、全部がねっとりしたアラビアコーヒーで極めて甘かった。見ていると閣僚クラスは人工甘味料を使っていた。「茶」がなんでコーヒーなのだろうか、今度事典で調べるまでは分からなかった。
 
ご承知のように「茶」はイギリスに渡って「紅茶」になった。ともに茶の木の葉っぱである。イギリス人たちが渡ってアメリカが出来たが、独立する時「茶」をきっかけとする戦争が本国英国との間に起きた。
だからと言うわけではあるまいが、アメリカではいまは紅茶を飲む人は少ない。コーヒーだ。薄いブラック・コーヒーを日本ではアメリカンというが,私の友人はニューヨークで「アメリカンをくれ」とやったのでアメリカ人は目を白黒させた。

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