446 龍国日本の”竜伝説” 古沢襄

麻布中学に合格した孫の竜太が、二泊三日で遊びにきて帰っていった。麻布中学校・高等学校は六年制の中高一貫教育校、ユニークな自由な校風に魅力がある。孫が大学をでて社会人になる頃は、私は八十五歳を越える。それまで生きられるか、それは神のみぞ知る。竜太の名付け親は芥川賞作家の辺見庸。
それにしても孫が社会人となり、やがて日本の次世代を担う頃には、日本はどうなっているのだろうか。欧米の識者は2050年には日本は核武装国家になると予測している。人口の減少傾向はとまらないであろう。孫たちの世代は重い荷物を背負わねばならない。
孫の名前のせいか「竜」に関心がある。東洋では龍、西洋ではドラゴンだが、いずれも伝説上の生物。実は竜の旧字が龍なのだが、字形としては竜の方が古いという。日本には中国の龍伝説と一緒に渡来した。
フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」によると、竜は神獣・霊獣であり、中国では皇帝のシンボルとしてあつかわれたという。水中か地中に棲むとされることが多い。その啼き声によって雷雲や嵐を呼び、また竜巻となって天空に昇り自在に飛翔すると言われる。
「竜に九似あり」とされ、角は鹿、頭は駱駝、眼は鬼(注:中国で言う「鬼」は幽霊のこと)あるいは兎、体は大蛇、腹は蜃(この場合の蜃は蛤ではなく蛟の意)、背中の鱗は鯉、爪は鷹、掌は虎、耳は牛にそれぞれ似るという。また口辺に長髯をたくわえ、喉下には一尺四方の逆鱗があり、顎下に宝珠を持っていると言われる。秋になると淵の中に潜み、春には天に昇るとも言う。
唐代に十二支に各々動物が当てはめられた際、唯一採用された伝説上の生物である。なぜ辰だけが想像上の動物になったのかはいまだに議論の的であり、定説がない。一説に竜の起源・または伝承の元は、古代に黄河流域にも実在したワニの一種(ヨウスコウワニもしくはマチカネワニ)ではないかとも言われている。
寒冷化や森林の砂漠化に伴ってワニやゾウなどの動物が姿を消し、そののちに誇張され伝説化したものだという。インドにも竜伝説がある。日本では古来から蛇神信仰があったが、中国から伝来した竜信仰と融合したという。干ばつが続くと龍神に食べ物や生け贄を捧げたり、高僧が祈りを捧げるといった雨乞いが行われている。弘法大師が祈りを捧げて龍神を呼び、雨を降らせたという逸話が残っている。
話は少し飛ぶ。日本列島はその形状から龍と称されることがある。そこから日本は東洋の龍の国と称されて、龍国日本の英語名はFar-East Dragon Japanとなった。日本は龍神に守られた国で、元(蒙古)の軍船が博多湾に来襲した時に、信州(神州?)の諏訪大社から龍が西に向かい、その龍が暴風雨を巻き起こして元の大軍の船を海に沈めたと信じられた。
さきの大戦で多くの庶民は、いずれ”神風”が吹き、米艦隊を海の底に沈めてくれると本気になって信じたが、遂に神風は吹かなかった。少し科学的に考えれば、台風の季節に元の軍船が博多湾に二度も来襲すること自体が無謀だったといえる。もっとも博多には三年住んだが、一度も台風には遭っていない。九州・沖縄は台風銀座なのだが、博多は災害の少ない土地柄であった。
戦後は神風を信じる者は誰もいない。この美しい国土は自らの手で守り抜くしかない。龍国日本の竜伝説を信じて、国の護りを怠れば、北朝鮮のノドン・ミサイルの一撃で右往左往する悲劇を招く。

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