安倍首相はようやく吹っ切れた様である。参院選が終わるまでは安倍カラーを封印して小泉内閣が積み残した諸懸案を成立させることに全力を傾注しようとしていた。自民党内の圧倒的な支持をえて、滑り出しは上々の出来であった。中朝両国の訪問によって停滞していた両国との関係も曲がりなりにも扉が開いた。懸案だった改正教育基本法と防衛庁の省昇格関連法案も成立している。安倍内閣の人気度も70%前後の高い支持率を得た。
昨年暮のことになるが杜父魚ブログで①安倍内閣の本来の姿というのは、戦後政治史でも希有なキャラクターの持ち主であった小泉首相が踏み荒らし、やり残した”どろ道”を修復するという割の合わない宿命を背負った政権。地道な仕事だから高い人気がでよう筈がない②安倍首相は通常国会で憲法改正の手続きを定める国民投票法案を成立させるつもりでいる。参院選後には消費税の税率をアップする税法改正案(仮称)を俎上に乗せるであろう。いずれも小泉内閣が先送りした重要法案で野党の激しい攻勢に曝される。これで人気も欲しいというのは二兎を追うことになる・・・と指摘した。
そして小泉内閣は自民党内の抵抗勢力と真っ正面から衝突したから、国民の支持率こそが強力な援軍であった。支持率目当ての演出に大きなエネルギーを費やしていたが、安倍内閣は党内融和の路線を取っているから、支持率が下がっても倒閣運動が出ていない。党内的にみれば小泉内閣よりも安定した基盤を保っている・・・ともいった。
さらには安倍首相の大叔父に当たる佐藤元首相は、七年八ヶ月の長期政権の保持記録を立てたが低支持率に終始している。歴代最長不倒の記録を維持したのは、野党の社会党の不人気もあるが、党内基盤が強固だったことに原因がある・・・ことも指摘している。
だが、ここにきて安倍首相は猛烈な向かい風に吹き曝されている。造反無所属議員の復党と閣僚の不規則発言が世論の批判を浴びた。安倍カラーを参院選後にだすなどと悠長なことをいっておれない。政権は長きをもって尊しとしない。短命であっても何を為し遂げたかで評価される。国の在り方を根本課題にした安倍首相は、国民投票法を成立させることに全力を傾注することで真価が問われる。
言ってみれば手続き法に過ぎない国民投票法なのだが、戦後半世紀以上も等閑にしてきた政治の責任は大きい。これを放置しておいて憲法改正論議をしても賽の河原で石を積むようなものではないか。国民が憲法の改正を選択するか、護憲の立場をとるかは、まだ先のことになる。国民が何を望むかは、さらに時間をかけて議論し、見きわめる必要がある。国の基本法とは、そういうものではないか。
安倍首相の周辺には、この政権を長期に維持したいという思いがある。中川幹事長が左にウイングを広げようと志向しているのは、その現れであるし、一概に非難されることではない。右の支持グループからは、安倍カラーをもっと強烈に出すことが、支持拡大に繋がるという意見もある。だが、左とか右とかいうのは、政権維持の手法に過ぎない。問題は長期政権を目指すことではなくて、現時点で何を為すべきかということではないか。国民投票法に手を染めて、安倍内閣が失速するなら、それをあえて受け入れる覚悟が必要ではないか。安倍首相はようやく吹っ切れたというのは、その原点に戻ったということに他ならない。
451 ようやく吹っ切れた安倍首相 古沢襄
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