国会は相変わらず議員会館の事務所費がどうだの、水道代がどうだのと低次元の騒ぎに明け暮れている。平和といえば、これほど脳天気な平和はない。いっそのこと衆参両院は都議会に吸収・合併して貰った方がいいのではないか。選挙目当てのパフォーマンはたくさんだと言いたい。
1994年に日本海に米艦隊が集結して北朝鮮と一触即発の事態になった時に、日本の政界は国内政争に明け暮れていた。十三年経った今でも同じことが繰り返されている。六カ国協議の報道が時たまでるが、これで北東アジアの平和は万々歳!、北朝鮮は平和国家の仲間入りして”四海の波静かなり”といった錯覚に襲われている。
日本海の波は静かどころか、米原子力空母ロナルド・レーガン(満載排水量10万2000トン)が、寄港地の佐世保港から姿を消した。東シナ海で戦闘攻撃機F18Eスーパーホーネットや早期空中警戒機E2Cなどがごう音を立て数十秒刻みで離着艦訓練を繰り返している。
ロナルド・レーガンに随伴するイージス艦「ステッテム」(満載排水量約8800トン、全長約155メートル)も大阪南港で物資の補給に余念がなかった。横須賀基地を寄港地にしているイージス駆逐艦「マスティン」(満載排水量9200トン)も長崎港に入港。核弾頭を搭載可能な巡航ミサイル「トマホーク」の発射能力を持つ米イージス艦だから、非核三原則はどうなっているのだろうか。水道代よりも、その論議が国会で必要ではないか。
一方では海上自衛隊のイージスシステム搭載護衛艦「あたご」が完成して就航した。これで日本は五隻のイージス艦を持つ。来春には六隻目の「あしがら」が就航する。「あたご」の配備先は舞鶴基地。
これまでの四隻のイージス艦(7、250トン級)に較べて「あたご」は7、700トン、約300人乗り組みで、高性能レーダー「SPY―1」を備えている。防衛省は四隻のイージス艦にも弾道ミサイルの追尾・監視能力を持たせ、迎撃ミサイル「SM3」を搭載する計画である。海上自衛隊のイージス艦には、弾道ミサイルへの対処能力が、まだ備わっていないが、これも備えるのは時間の問題であろう。
日米の日本海や東シナ海における海上軍事力は、急速に強化されている。”四海の波静かなり”になるとは思っていない証拠ではないか。目をインド洋に転じると米海軍の原子力空母「ジョン・C・ステニス」が、この海域の米原子力空母「ドワイド・D・アイゼンハワー」に合流した。緊迫するイラクとアフガニスタン情勢に備えたものといわれるが、対イラン攻撃の準備ではないかとの憶測も出ている。この海域にも海上自衛隊のイージス艦が加わって補給業務についている。
ギリシャ神話に登場する最高神ゼウスが、娘アテナに与えた、あらゆる邪悪を払うイージスの盾からきたイージス艦は、遠距離から同時・多数飛来する航空機や対艦ミサイルから艦隊を守る最新鋭艦である。米海軍と海上自衛隊が保有するが、他にはスペインのF100フリゲート一隻のみ。
イージスBMD計画では、大気圏外で弾道ミサイル迎撃可能な、SM-3スタンダード・ミサイルBlockIA(実戦配備型)の配備を行う。米イージス艦は防空機能にとどまらず、核弾頭を搭載可能な巡航ミサイル「トマホーク」の発射能力を持っているから、破壊的な攻撃能力を保有している。これに米海軍の原子力潜水艦が西太平洋に配備・強化されて日本列島周辺の海域にも出没している。”四海の波静かなり”ではなかろう。
476 ”四海の波静かなり”なのか? 古沢襄

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