イラク戦争が秒読み段階になった頃、旧海軍の提督氏と食事をともにしたことがある。「アメリカのエネルギー庁が、石油の備蓄が最大規模だった1994年と同量になったと公式発表した」との米紙の切り抜きをみせてくれて「日本の新聞のほとんだが、扱っていないが、アメリカの開戦準備の半分が出来あがった」証拠だという。
「何故半分なのか・・・」?。提督氏がいうにはイラク作戦に必要な米空母機動部隊がインド洋などの海域に完全配備されていない、と指摘した。軍事の素人は、太平洋に配備されている米空母機動部隊を持ってくれば、開戦準備がすぐ整うと思う。
ところが、そうではない。西太平洋に配備された第七艦隊は中国に対する攻勢防御の使命を持っている、第七艦隊をインド洋に持ってくれば、西太平洋の守りに穴が空く。イラク攻撃に必要な艦隊は、米本土で兵員の編成・訓練を実施して持ってくる。
それが横須賀基地やオーストラリア海域にある米空母機動部隊の補充となる玉突き艦隊になるにせよ、時間と金がかかる。外洋艦隊というのは”金喰い虫”だという。
イラク作戦に必要な空母機動部隊は四編成になるという。一編成の空母機動部隊には、四隻のイージス艦が通常は配置される。今のところ空母二隻、イージス艦八隻が配備されているが、必要な四編成の半分だといった。事実はその通りとなった。
空母の所在を確認できなくても、イージス艦の確認は容易にできるそうだ。アメリカが保有するイージス艦は六〇隻。十六隻のイージス艦が、この海域に揃えば、イラク戦争の開戦準備が整ったとみればよい。海軍提督らしい”読み”であった。
この読み筋でいくとイラン周辺の海域に増強された米空母機動部隊は、まだ二編成。イラン攻撃の準備は、整っていないことになる。提督氏は、すでに亡くなったが、米国のイラン攻撃は憶測の段階に過ぎないというのであろう。
1994年に北朝鮮との全面戦争を決意したアメリカは「作戦計画5027」を発動して、日本海の元山沖にブルービッジを旗艦とし、空母はキテイホーク、インデイペンデスなど四隻、ペローウッドなどの揚陸強襲艦など延べ一〇〇隻を集結している。提督氏は、この編成と石油備蓄量をみて、アメリカは本気になって北朝鮮攻撃の態勢をとったと判断している。
1994年危機はカーター元大統領の歴史的なピョンヤン訪問によって回避されたが、元海軍の提督らしい軍事的な見方には説得力があった。
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