510 レミーマルタンと大豆の交換 古沢襄

物ごとは重なるものである。福井県の「ピロール農法研究所」からピロール農法勉強会資料を送って頂いた。最近、有機微生物農法について様々な批判が出ている。私自身も庭のバラやさつき、つつじなどの花卉は、この農法でやっているが根ぐされが目立って困っていた。
ピロール農法と有機微生物農法の比較表をみていたら、ピロール農法ではシアノバクテリアという独立栄養微生物を増殖させると土中で酸素を出すので、稲や野菜が深く根を張るという。従来の有機微生物農法だと、従属栄養微生物を利用するが、その微生物が生きるために酸素を使い、有機物を分解する過程で炭酸ガスを出すという。
この結果、酸素が少ないために根ぐされが起こりやすくなり、稲作では”中干し”が必要になるという。私の場合は、明らかに有機肥料のやり過ぎが、バラの木の根ぐされを起こしている。
東北大学の教授で地球物理学者の梁瀬光世氏が書いた「ピロール農法」を読んでいたら、誰かが玄関のベルを押している。時計をみたら夜の九時。誰かと思ったら、近くの農家の染谷氏であった。
「レミーマルタンのブランデーを飲んでケロ」と一本抱えている。いつもお米は染谷氏から買っているので親しくなったが、六〇歳の手習いでパソコンを始めるというので、私が即席の家庭教師になった。ブランデーは教授料ということか?
「まあ、あがれよ」と言ったのだが、夜が遅いので染谷氏は遠慮して、玄関の中で長話になった。染谷氏はもともとは農家ではない。父親は食糧庁のお役人だったが、大地主だったので、慣れぬお百姓をやることになったという。
それだけにコツコツ勉強しながら、米や野菜を作ってきた。とにもかくにも、大変な”もの識り”博士で、雑学の権威と自負する私もタジタジとなることがある。「今の有機微生物農法は間違っているな。牛や豚の糞を肥料として使うのは、危険なのですよ。牛や豚の健康維持のために使う薬剤が、どういう成分なのか分からない。それが米や野菜に吸収されて、人体にどういう影響を及ぼしているか・・・」と言い出した。
「リン酸肥料は使う必要がないのですよ。落ち葉の中にリン酸が含まれている。その水分が蒸発して、雨が降れば、自然のリン酸が降ってくる!人間も栄養を取り過ぎれば、あちこちに障害がでてくる。今の農業は肥料のやり過ぎ!」と熱弁をふるう。
どうも一方的な勝負になりかけたので、覚えたばかりの「ピロール農法」爆弾を投下することにした。「ピロール農法って知っている?」「・・・・・」「シアノバクテリアというラン藻を使う新農法だよ」「藻か?クロレラだな」
こうなるとにわか勉強の悲しさ。梁瀬光世元教授のパンフレットを頼りに「クロレラは緑藻の一種で、ビタミンやミネラルを含んだプランクトンだよな。ラン藻は植物ではなくて、微小生物なんだな」・・・・・これ以上、質問されるとメッキが剥げる。
風呂場でガタンと音がした。風呂から出た女房がアラレのない姿をしているらしくモタモタしている気配がする。「ピロール農法の資料はコピーしておくから、一緒に勉強しようや」と言ってお開きにした。
「ピロール農法研究所」の黒田与作氏から大豆が二袋送って貰たので、レミーマルタンのお返しに大豆を一袋。染谷氏は「ピロール大豆を蒔いてみよう」と言い残して帰っていった。研究熱心な人である。

コメント

  1. 矢島 信幸 より:

    こんにちは、私はピロール農法を推進しています有限会社レアドークの矢島と申します。
    今度長野県の長野支部ということでピロール農法を長野県に広げようと今年の10月から勉強をしております。12月中旬にはホームページも開設致します。
    ピロール会員の方は全国に沢山いますので皆さんと一丸となって安心な食べ物、安全な農業が日本中に広まればと心から願っています。
    どうか今後とも力を合わせながらお互いがんばっていきましょう。
    急なコメントで申し訳ございませんでした。

  2. 黒田与作 より:

    おはようございます。矢島さん・・福井のピロール与作こと、黒田与作です。勉強されていますね。この古澤さんのカジカ文庫・カジカブログを時々読まれると人間の幅と格が上がりますからね。よく、この掲載記事を見つけられましたね。昨年の宮城の津波による塩害圃場において、ピロール農法が 復興トマト( 塩害の中でも農作物が栽培可能を証明 )栽培に一役を担ったのですから、ようやくその素晴らしさが認められてきました。今年の農業白書にも掲載されましたからね。長野の アスパラガス・野沢菜をピロールブランドにしましょうね。

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