米ワシントン・タイムズがブッシュ・安倍首脳会談で、米空軍の最新鋭戦闘機F22ラプターを日本側が一〇〇機導入する話し合いが行われると事前に報じていた。首脳会談でどのような話し合いがあったか真相はわからない。
ある意味では、日本のマスコミが取り上げている従軍慰安婦の問題よりも大きな問題といえる。中国や北朝鮮、韓国が極東の軍事バランスを根底から変えるものとして、警戒感を示している。
F22は、レーダーに捕捉されにくいステルス性と超高速巡航能力を兼ね備えた高性能戦闘機として1990年代から開発されてきたが、冷戦の終了で計画が縮小されていた。昨年十二月に初めてバージニア州ラングレー空軍基地に実戦配備されたばかり。
ことしになって二月から沖縄の米軍嘉手納基地に12機のF22が暫定展開されている。航空自衛隊は米空軍のF22ラプターと、沖縄周辺の訓練空域で共同訓練する方針を固め、共同訓練には空自那覇基地所属のF4のほか、第6航空団小松基地のF15数機が参加して、二十七日から実施された。
F22の優れた性能は①レーダーにとらえられない優れたステルス性能②スーパークルーズ性能(超音速巡航)③早期警戒と偵察能力・・・にある。レーダー上でのF22の大きさはFー117ステルス爆撃機の四分の一から六分の一で、肉眼ではほとんど見えないレベル。
昨年アラスカで行われたFー15、Fー16、Fー18など米主力戦闘機との模擬空中戦では、F22は接近していることも把握されないまま完全に勝利し、結果は144対0だったという。
軍事専門家はF22を日本が一〇〇機保有すれば、中国や韓国との空軍力比較では日本が圧倒的に有利になるとみている。海上自衛隊はイージス艦六隻(一隻は年内に配備)を保有し、アジアでは最強の海軍力を持ったが、航空自衛隊にF22が配備されれば、空・海ともにアジア最強の戦力を持つことになる。すでに解釈改憲のワクを遙かに越えている。
いずれも日本に照準を合わせた北朝鮮のノドン・ミサイルを意識して、抑止力を強化する狙いがあるが、北朝鮮のみならず中国を刺激することになりかねない。韓国の軍部内にも日本を仮想敵国視する論も生まれているという。
来年夏に予定されている次期主力戦闘機(FX)の選定で、防衛省がF22の導入を考えているのは間違いない。すでに事務レベルでF22の性能について米側との打診工作が行われているが、近く久間防衛相の訪米も予定されている。問題はF22の価格である。
米事産業業界のニュースレター「インサイド・ジ・エアフォース」の最新号によるとロッキード・マーティン幹部が対日輸出について「まだ最高レベルの検討には及んでいないが、そこへ向かいつつある」と述べたという。 一機の調達価格は約1億3000万ドル(152億円)で、同社幹部は日本側にもほぼ同様の価格を提示している。
しかし一機当たり3億ドル(約358億円)ともいわれ、Fー4の40億円、Fー15の120億円を遙かに上回る。一兆円近くを要するミサイル防衛システム構築の費用と合わせて考えると財政負担の面でハードルが高い。
しかも米国が保有しているF22は183機、機密性の極めて高い先端軍事技術が多用された戦闘機なので、これまで他国と共有することには一九九八年の米国議会で海外販売を禁止した事情がある。日米ともに困難な事情があるので、F22の導入については曲折が予想される。やはり国会でF22の導入計画について論議を尽くす必要がある。
534 最新鋭戦闘機F22の導入計画 古沢襄

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