安倍首相の訪米よりも中東歴訪に興味がある。英国のロイター通信社がサウジアラビアのリヤドから伝えてきたところによると、安倍首相には約170人から成る日本経団連ミッションが同行したという。
現地で行われた日本とサウジの経済界トップらが参加した経済セミナーで安倍首相は挨拶し、日本と中東の新たな関係を目指すことを強調、そのためには中東の主要国であるサウジとの関係拡大が不可欠、との認識を示した。また、経済関係を「多層的な関係」に広げるために、日本の経験や知識を活用する意向も表明した。
安倍首相は日本とサウジは石油中心の関係を超えて、幅広い経済分野での協力関係を築く必要があるとの考えを明らかにした。安倍首相の中東訪問は、日本の中東における存在感を高め、中東地域からの原油の安定供給を確実にすることが最大の目的・・・とロイターは伝えてきた。
ロイター通信社は世界的な経済ニュースを扱っている。倉田保雄氏は「ニュースの商人ロイター」という本を1979年に新潮選書に書いたが、こと経済ニュースについては米国を代表する国際通信社APよりも上を行く。
超大国アメリカの通信社が軍事・政治ニュースに力を入れてきたことに対して没落した大英帝国の通信社が経済ニュースで他を寄せ付けない強味をみせているのは興味深い。ロイターは伝統的に中東地域のニュースに強い特徴がある。
日本のマスメデイアは米国における従軍慰安婦の批判論議に視点をとらわれ過ぎている。訪米前、米下院外交委員会に、いわゆる従軍慰安婦問題に関する対日決議案が提出され、政治問題化したが、全米で対日批判が高まっているわけでない。同じ対日決議案が過去にも何度か提案されている。
元慰安婦に対する同情と謝罪の意を表した河野談話で決着がついている問題が、安倍首相の訪米を前にして再燃したのは、北朝鮮による拉致問題で強硬な態度を示す安倍首相に対する在米の反日勢力が仕掛けた反撃という性格が強い。極めて政治的な側面が濃厚である。
訪米で安倍首相が火だるまになることを期待した向きもあろうが、ブッシュ米大統領は、拉致問題解決への協力を表明し、北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除の検討にあたっては「拉致問題を考慮に入れる」と表明した。従軍慰安婦と拉致問題を相殺する試みは成功しなかった。
安倍首相の訪米滞在が短か過ぎたという論もある。しかし安倍・ブッシュ首脳会談で日米が”かけがえのない同盟関係”という認識を再確認した。日米が提携して、北朝鮮に対して核廃棄を迫っていくことでも一致している。後は北朝鮮の出方ひとつにかかっている。
それ以上、長居をして話し合う必要があるだろうか。追いかけるようにして麻生外相や久間防衛相が訪米する。派手な演出は無かったが、日米首脳会談は成功したとみるべきであろう。
それよりも安倍首相の中東歴訪の方が意味がある。最大の目的であったサウジアラビア訪問は成功裡に終わった。引き続いてアラブ首長国連邦、クウェート、カタール、エジプト歴訪の旅がある。
535 サウジ入りした日本経団連ミッション 古沢襄

コメント