松岡利勝農相の自殺は暗く痛ましい事件である。遺書が八通のこされているというが、自殺に追い込まれた心の闇は解明できないのではなかろうか。農水省所管の独立行政法人「緑資源機構」の談合事件に絡み、検察当局の手が伸びていたが、松岡農相の死によって今後、どのような展開をみせるのであろうか。
遺書には緑資源機構に触れた文言はないという。また松岡農相の自殺の翌日に旧森林開発公団(現緑資源機構)の山崎進一元理事が、後を追うように飛び降り自殺している。単なる談合疑惑ではない、裾野の奥深い闇がある様な気がする。
この事件が与えた影響は安倍政権の土台を揺るがすものになろうとしている。検察がどこまで真相に迫ることができるのであろうか。現職閣僚の自殺事件という戦後初めて事態だけに、閣僚の補充人事で固塗して、しのげる事態ではないことははっきりしている。
このままでは自民党は参院選で窮地に立たされるであろう。参院選の前に内閣改造を行って、新しい体制で選挙に臨む声が自民党内から起こる可能性があるが、内閣改造を行っても国民の不信感は払拭されまい。むしろズルズルと国民の信頼が薄れ、安倍内閣が目指す戦後レジームの打破などは掛け声倒れに終わることになりかねない。
連立与党にとっては大きな賭けになるが、ここは国会を解散して衆参ダブル選挙で国民の信を問うしかない。その結果、連立与党が敗北すれば潔く野に下るのが憲政の常道ではなかろうか。現職閣僚の自殺事件は、それだけの重みが存する。
それをせずして閣僚の補充人事とか内閣改造人事によって、二ヶ月を切った参院選に臨み、三百三十六議席の衆院与党議席に頼ろうとすれば、安倍政権は死に態になりかねない。政権は持続できても、参院で大幅に議席を失えば、国政は混乱するばかりである。
仮に連立与党が衆参ダブル選挙で敗北しても、小沢民主党を中心とした政権が安定したものになるとは思えない。攻守ところをかえた政争が激しさを増すだけのことになるかもしれない。しかし国民の目にみえるところで政争が展開される。
小沢民主党が単独で政権を握る可能性は残念ながら薄いとみる、社民党や国民新党、場合によっては共産党との政策協定が必要になると思うが、第二の細川内閣の再現になる可能性すらある。
それでも、なお政局の転換を求める声が国民の多数となれば、それは国民の”天の声”ではないか。安倍政権の存続を求める声が多数となるか、小沢政権の登場を求める声が多数を制するか、国民の審判を求めるべきであろう。
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