五月十五日のことになるが、安倍首相は中川幹事長と会談して「衆院議員は常在戦場の意識を持って貰いたい」と早期の解散・総選挙の可能性に言及している。松岡農相の自殺に先立つ二週間前のことだが、参院選に危機感を持つ安倍首相の決意の現れといえる。
中川幹事長は十四日と十五日に開かれた全国十五ブロックの衆院議員との個別会合で「参院選を衆参同日選的な選挙と位置づけ、参院選候補者の全面支援をお願いする」と檄を飛ばしたが、松岡農相の死によって、これがにわかに現実味を帯びてきた。
その一方で、現実的には衆参同日選的な態勢が整った選挙区はほとんどないというのも事実である。昨年の郵政総選挙によって自民党は306議席(松岡農相の死によって305議席)という地滑り的な圧勝を得ている。議員心理として唐突な解散・総選挙には抵抗感があるのは否めない。
とくに選挙基盤が固まっていない一年生議員、二年生議員には戸惑いがある。内閣支持率が低下しているのも不安材料になっている。下手をすれれば笛吹けど踊らずになりかねない。公明党も早期の総選挙には懐疑的である。
一直線に衆参同日選に向かうとは思えないが、松岡農相に攻撃の矢を絞っていた野党側は、予期せぬ松岡農相の自殺によって、安倍首相の任命責任に攻撃の矛先を移している。死者に対して攻撃するのは、日本人的な感情にはそぐわない。墓を暴いてまで死者を攻撃するのは、他国にはよくあることだが、日本の文化にはそぐわない。
その分まで安倍攻撃に集中してくる可能性が大きい。これまで衆院のおける圧倒的な多数にものを言わせて、重要法案を成立させてきた安倍内閣だったが、松岡農相の自殺によって事態は一変している。
掛け声のきらいがあった衆参同日選だが、本気になって、その可能性を模索し始めているフシがある。中川幹事長は党本部が中心となって独自の世論調査を行ってきているが、衆参同日選によって衆院で多少の議席減があっても、参院で連立与党が過半数を維持できる見通しを持てば、あえて衆参同日選の選択肢を視野に入れる判断を下すかもしれない。
自民党の舛添要一参院政審会長は衛藤晟一前衆院議員の復党について「「国民に説明できないことをやり続けるなら衆参同日選をやる以外に勝てる見込みはない」と安倍首相を批判したことがある。当分の間、衆参同日選の動きについて目を離すことができなくなったといえる。
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