参院選で民主党は「レズビアン」の尾辻かな子さんを比例代表の候補者として擁立している。フランス大統領選挙でロワイヤル候補が同性婚を容認、サルコジ大統領が反対して同性愛が争点となったが、日本でもセクシャルマイノリティ(性的少数者)の差別・偏見に挑戦する動きが出ている。
もともと民主党はマイノリティ(少数者)に対して寛容な政党である。外国籍で日本国籍を取得したツルネン・マルティ氏、蓮舫さん、白真勲氏を公認して参院議員に送り込んできた。
七月の参院選では尾辻かな子さんのほか、在日の元韓国籍で障害者である金政玉氏を公認候補として擁立している。この二人が当選できるかは、大多数の日本人がマイノリティに対して、どれだけ寛容になっているかを示すバロメーターとして注目してよい。
ただ同性愛についての国民的な容認度は、欧米よりも嫌う風土が日本には残っている。レズビアンに対する禁忌は、農村地帯に牢固として残っているので、その壁を乗り越えられるのか、隠れた争点として注目したい。
少子高齢化が進む日本では、いずれ移民問題が大きな国民的課題として浮上してくるであろう。いつまでも単一民族に寄りかかるわけにはいかない。民主党が先駆的にツルネン・マルティ、蓮舫、白真勲各参院議員を送り出したのは、ひとつの時代の流れとして評価してよい。
だがレズビアン容認にまで踏み切ったのは、民主党の保守層の離反を招くことになりはせぬか。レズビアンの支持層が、まだ大きな政治勢力になっているとは思えない。米国でもフランスでも伝統的な宗教勢力は拒絶反応を示している。
大多数の日本人は男性と女性が愛し合い子供を生んで、子孫が繁栄する社会を望んでいるのであろう。だが、その半面、男性が男性を愛し、女性が女性を愛する層が歴然として存在する。このマイノリティを忌避し、社会から葬り去るのは穏やかでない。
セクシャルマイノリティに対する寛容さが育つには、まだ時間がかかる気がする。戦後日本が文明の爛熟期に入っているのか、どうかは議論が分かれるところだが、見方によってはローマ帝国の衰退期に現れた社会現象と同一視する保守的な批判が高まるかもしれない。
その意味で民主党が尾辻かな子さんを公認したのは、小沢代表の強い推薦があったというが、日本社会に一石を投じたものとして、その帰趨を注目している。
コメント