635 635 靖国カードで中国を手玉にとる安倍首相 伊勢雅臣

月刊誌『Voice』の7月号に、石平氏の「手玉にとられた恩家宝首相」[1]が掲載されている。石平氏については、JOG(461)「中国反日外交の迷走」[a]で、その鋭い考察の一端をご紹介したが、今回の論考も秀逸である。
ここでは、石平氏の論考のポイントを箇条書きで挙げておくが、ぜひ本論を読まれることをお勧めする。
・もし、安倍首相が靖国神社に参拝したら、胡錦濤・温家宝体制は国内からの突き上げで大きな打撃を受ける。安倍首相が、「靖国参拝をするか、しないか、行ったか行かないか」も言わないという曖昧戦略は、胡・温体制にとって、いつ爆発するか分からない時限爆弾のようなものだ。
・そのため、今回の温首相の来日でも、「戦争責任に対する日本の反省とお詫びを積極的に評価する」ことを中国首脳として初めて表明したり、日本の経済援助について感謝の意を率直に表したりと、かつてない「友好姿勢」を示した一方、「靖国参拝問題」については、避けて通った。
・今回の首脳会談では、安倍首相自身の強い要望で、今年秋に東シナ海のガス田開発問題に関して、共同開発の具体案をまとめる方針が確認された。今年秋には、中国側が最も恐れる「秋の例大祭での靖国神社参拝」があり得るかも知れず、この時期を期限とすることで、中国は従来のような引き延ばし戦術をとれなくなる。
・今回の首脳会談で、中国側は突然、拉致問題への協力を言い出した。これは安倍首相への貸しを作ることで、なんとか靖国参拝を止めて貰いたいという中国側の願望が込められている。中国が拉致問題でこれから何をやってくれるのか、安倍首相はお手並み拝見という所である。
・温首相の国会演説の翌日、憲法改正に道を開く「国民投票法」が衆議院で可決された。従来の中国であれば、「平和憲法の改正は軍国主義復活への道」と声高に反対し、それを受けて国内の護憲勢力が強硬に抵抗しただろう。しかし、なんとか靖国参拝を止めて貰いたい胡・温体制は、この問題で波風を立てなかった。国内護憲勢力は、中国の後押しを失って、ハシゴを外されてしまった。防衛庁の省昇格に関しても、この力学が働いた。
こうして見ると、靖国参拝に関する「曖昧戦略カード」がいかに有効に効いているか、がよく分かる。それを活用した安倍首相の外交手腕も見事だが、筆者には、靖国の英霊が安倍首相を「戦後体制の脱却」に向けて、後押ししているように思われてならない。(「国際派日本人の情報ファイル」より)

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