欧州5ヵ国を歴訪中の天皇皇后両陛下は、29日、ロンドンのリンネ協会で開催された「リンネ生誕300年記念行事」にご出席され、10日間に5ヵ国を巡られるというハードスケジュールの訪欧の公式日程をほぼ終えられた。両陛下がご無事でご訪問されたことに胸をなでおろすとともに、改めて感謝申し上げる思いである。
小生にとっては今回、両陛下がリンネ生誕の行事が英国で開かれるに当って、初めて旧ソ連支配下にあったバルト3国ご訪問をご希望されたことは意義深く感じている。バルト3国は文字通り帝政ロシアから1940年に一旦は独立したものの、91年に米ソの新冷戦構造が崩壊した流れの中、ソ連の新思考外交と米ソの核削減交渉により、共産政権が次々と雪崩うって崩壊する中で3カ国が共に独立を果たした歴史がある。
とくに第一次世界大戦下のリトアニアの杉原千畝の命のビザの話は有名であり、日本人も親近感を持っている。結局、杉原氏はこのことにより外務省を退職せざるを得なかったわけであるが、両陛下が杉原氏の記念碑前でその事跡に拝礼をされた報は、杉原氏の人のため、困っている世界の人々のために役立とうとされた正義感に時間を越えて、顕彰しようとされたお心が伝わってくる。
リトアニア大統領主催の午餐会で陛下は次のようにご挨拶された。
「第二次世界大戦の惨禍や、その後人々が経てきた苦難の歴史に思いを致し、貴国の人々が勇気と誇りをもって困難に立ち向かってきたことに深い感慨を覚えます」
このお言葉の中には、かの国の歴史だけでなく、おそらく杉原千畝のことも含まれているのだと拝察申し上げる。
またスウェーデンや英国では陛下が博物館や講演で、熱心に説明を聞かれたり、質問をされたりする場面が多く、そのことが多くの人々の心を引きつけたとのことであるが、皇室外交の最たる所以であろう。
とりわけ先の大戦後の各国の趨勢については細やかな学習を背景にしつつも、一貫して苦難の歴史に思いを致しながら、その困難に立ち向かっている国民の姿勢にいつも触れられ、さらにわが国との関係を的確に捉えているところに、各国国民は注目しているのだと思う。
この新たな感動が、日欧関係の架け橋になることを確信する。(国際派日本人の情報ファイルより)
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