690 690 美しい心が美しい景観をつくる 伊勢雅臣

日本を訪れた李登輝・前台湾総統は、日本三景として知られる松島の海景色を一望して、その美しさを
松島や光と影の眩(まぶ)しかり
と詠んだ。その後、李登輝夫妻は「山寺」の名で知られる内陸の立石寺(山形県)へと向かった。
昨日は海、今日から山。正直にいってびっくりした。森の緑のみずみずしさ。山が大切にされているなぁ。台湾も国として全体的な国土保全を真剣に考えなくちゃいけない。台湾はあと50年かかるかなぁ。
日本の海や山の美しさは、日本人が代々大切にして守ってきたものだ。
ここで断っておきたいが、台湾の自然は世界的に見ても、かなり美しく保たれている方である。ただ、日本に比べれば、という事であろう。
明治初年に東北地方を旅行したイギリスの女流探検家イザベラ・バードは、江戸時代の余韻を残す米沢について、次のような記述を残している。
南に繁栄する米沢の町があり、北には湯治客の多い温泉場の赤湯があり、まったくエデンの園である。「鋤で耕したというより、鉛筆で描いたように」美しい。米、綿、とうもろこし、煙草、麻、藍、大豆、茄子、くるみ、水瓜、きゅうり、柿、杏、ざくろを豊富に栽培している。
実り豊かに微笑する大地であり、アジアのアルカデヤ(桃源郷)である。自力で栄えるこの豊沃な大地は、すべて、それを耕作している人びとの所有するところのものである。・・・美しさ、勤勉、安楽さに満ちた魅惑的な地域である。山に囲まれ、明るく輝く松川に灌漑されている。どこを見渡しても豊かで美しい農村である。
しかし、こうした美しい光景は、我々の先祖が作り出したもので、戦後の日本はどのような美しい光景を作り出したのだろうか。日本の都市の景観のひどさを思うと、外国からお客を迎えるたびに恥ずかしい思いがする。
特に最近は、周囲との調和など一切考えない、黄色やピンクの建物があちこちに作られて、自己中心的な現代日本の風潮がそのままに現れているようだ。
美しい心が美しい景観を作り、その美しい景観が次世代の人々の美しい心を育てる。「美しい国」とは、景観の面でも美しくなければならない。建築や不動産関係の仕事をしている人々には、ぜひこの事を念じて、少しでも美しい景観に近づくような建築や都市開発をお願いしたい。(国際派日本人の情報ファイルより)

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