国会が事実上終わり、いよいよ参院選一色という矢先に飛び出た久間防衛相の不用意な失言だから影響は少なくない。野党が何もしなくても、内閣の重要閣僚が自分から勝手に転んでくれたのだから”久間様々”であろう。
米国の原爆投下に関し「しょうがない」と発言する神経が分からない。政治家でなくても被爆国の日本人なら言ってはならぬことである。むしろ声を大にして、無辜の市民を殺傷した原爆投下を非難せねばならぬ。この防衛相は就任以来、失言を繰り返しているが、言ってはならぬことの区別がつかないのではないか。
安倍首相はまた久間防衛相を庇うのであろう。傷が広がり、とてもじゃないが選挙にならないという自民党の悲鳴が聞こえてくる。単なる失言ではないのだから、選挙に与える影響を思えば、言われる前に久間防衛相は責任をとって辞職すべきであろう。真意が伝わっていないとか、説明責任を尽くすということ以前の問題である。
本人にそのつもりがないのなら、安倍首相が久間防衛相を解任せねばならぬ。そのいずれもできないままにズルズルと時を過ごせば、安倍内閣の支持率は30%を切るのも時間の問題となる。参院の長崎選挙区だけでなく九州全体で自民党は守勢に立たされ、広島選挙区の行方も不透明になる。
通常国会の逆風の中で安倍内閣は重要法案を軒並み成立させた。その強引な手法については批判が伴ったが、一応の成果をあげて参院選に臨もうとしていた矢先の久間失言。やはりこの内閣はどこかタガが弛んでいる。
タガが弛んでいるから、度重なる久間失言の対応策が後手に回っている。「信じられない。何かの間違いではないのか」という声があがるが、中川幹事長は「原爆投下とソ連参戦の関係というのは歴史観の問題で、真意は分からないが、一個人の意見だと思う」といった程度の間の抜けた対応しかしていない。
野党の方は勢いづく。「被爆国の閣僚として絶対に許されない発言だ」(志位和夫共産党委員長)、「(原爆投下は)事情によって仕方ないという考えを表明すると、被爆国日本の核廃絶の主張と矛盾してくる」(菅直人民主党代表代行)、「原爆によって亡くなった多くの人々と、後遺症に苦しむ被爆者に対する思いが全く感じられず許し難い」(福島瑞穂社民党首)と久間防衛相の罷免要求で足並みを揃えだした。
野党から罷免要求がでれば、与党はそれに屈することはできないという力対力の論理のぶつかり合いになる。それで久間防衛相を庇えば、庇うだけ自民党にとってマイナス・イメージが増幅される。参院選にとって、どれだけマイナスになるか、はかり知れない。この調子なら参院選の投票日までにタガが弛んだ内閣から、不用意な不規則発言がまた飛び出すのかもしれない。
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