北朝鮮との融和路線をひた走るライス国務長官・ヒル次官補に対してブッシュ政権を離れたボルトン前国連大使が批判の度を強めているが、米国防総省内にも批判的な空気がある。その中で知日派で知られる米国防総省のリチャード・ローレス副次官が七月に引退が決まり、安倍政権内でも懸念する空気があった。
しかし日米同盟を重視する米国防総省は国防長官特別顧問を新設し、初代特別顧問にローレス氏を指名する運びとなった。これで日本側の懸念が払拭されたと手放しで喜ぶわけにはいかないが、知日派が少なくなった米政権だけにローレス特別顧問に期待するものがある。読売新聞と共同通信がワシントンから次ぎにように伝えてきた。
<【ワシントン=五十嵐文】米国防総省はアジア地域の同盟管理を担当する「国防長官特別顧問」の役職を新設し、初代特別顧問にリチャード・ローレス前国防副次官を指名する方針を固めた。同省当局者が6日、明らかにした。
アジア担当の特別顧問ポストの新設は、北朝鮮の核開発や中国の軍事力増強など不安定さを増すアジア地域の安全保障環境を踏まえ、日本や韓国、オーストラリアとの同盟強化を図るのが狙い。
日本との間では、沖縄県の米軍普天間基地移設など在日米軍再編の早期実施や、ミサイル防衛(MD)での協力推進といった課題が山積している。韓国とは、在韓米軍削減問題などをめぐりあつれきが生じている。一方、対テロ対策などでは、オーストラリアを含めた日米豪3か国の安保協力拡大の必要性が増している。>
<【ワシントン6日共同】ローレス前米国防副次官は6日、退任記者会見で、北朝鮮が従来のスカッドミサイルより高性能の新たな短距離弾道ミサイルを開発、発射実験にも成功したことを明らかにした。射程は120-140キロ、韓国が標的という。AP通信が伝えた。北朝鮮は先月27日、ミサイル3発を発射、米政府は短距離弾道ミサイルと断定しており、発言はこのミサイルに言及したものとみられる。>
ローレス氏は六月の米下院軍事委員会の公聴会で中国の実質国防費について、公表ベースで対前年比17・8%の伸び率を示し、日本の防衛費(約4兆7818億円=平成19年度予算)を上回っていたが、装備費や研究開発費を含めた中国の実質国防費が日本の3倍に上る可能性を証言している。
さらに米本土の広い範囲を射程内に収める改良型の移動式弾道ミサイル東風31号(DF31A)の開発動向や、潜水艦を含む空海軍装備の近代化を挙げて「中国の軍事力を監視することは国防総省の責務」と言い切った。
北朝鮮についても開発・発射実験に成功した新型短距離ミサイルは、従来のスカッド地対地ミサイルより命中率が高く、短時間での発射が可能で、朝鮮半島の新たな脅威になると懸念を示している。
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