NHKが中国の武夷山を三十分番組で放映してくれた。世界遺産の紹介番組である。私にとっては中国史の恩師・矢沢利彦氏から教えていただいた武夷茶の産地。この地を訪れるのは不可能と思っていただけに息を飲んで武夷山風景を見た。
最高の武夷茶は皇帝しか飲むことができなかった「大紅袍」。一杯の「大紅袍」は数万円とも言われる。中国では国賓級のゲストだけに最高級の「大紅袍」を振る舞うという。訪中した田中元首相が「大紅袍」を振る舞って貰ったか、寡聞にして聞いたことがない。
「大紅袍」の茶葉のほとんどは中国政府に納められ市場にはほとんど出ないという。その「大紅袍」を上海の猫ジジイ氏から頂戴して大切に飲んでいる。茶の味を知らない女房や娘たちには飲ませていない。接ぎ木からつくられた二~三、四世の茶葉だから皇帝茶ではないが、それでも高価。目がつぶれる思いで飲んでいる。
華やかな香りと甘味がある。岩韻という残香が特徴で、茶の色は透明感のあるオレンジ色である。猫ジジイ氏から注文を受けて送ってくれた上海小町さんから次のメールを頂戴している。
<武夷山に茶園を持つ私の先生によると、「大紅袍」の母樹は6本だそうです。1年の生産量は極くわずかで、母樹から作られた「大紅袍」を飲めるのは「縁」のある方のみと言われています。
一方、市場に出回る「大紅袍」とは母樹の味に近づくよう、何種類もの岩茶をブレンドしたものです。ブレンド師の腕により、値段はピンキリです。猫ジジイさまの「大紅袍」は、一昨年のコンテストで第一位を取ったものです。
そして「北斗一号」は6本ある母樹の1本を「北斗峰」に挿し木栽培したもので、その純粋種はほとんどの「大紅袍」より価値が高いと思われます。
「大紅袍」にしろ「北斗一号」にしろ、お茶好きを唸らせる一品です。ペットボトルで持ち歩いたら、これ以上ない自慢の品となること間違いなしです。>
ここに出てくる「北斗一号」は力強いスパイシーな味わいと香りが特徴。「大紅袍」と一緒に送って頂いてあるが、勿体なくて封を開けていない。「大紅袍」よりも上位の武夷茶といわれているので、何かの祝い事がある時に飲むつもりでいる。
このところ中国の食品は評判が悪いが、高級品は歴史と伝統を思わせる逸品揃い。安かろう悪かろう、を求める消費者側にも問題があるのではないか。良いものをちょっぴり頂く分には中国の食品でも問題はない。安物買いの銭失いというではないか。
743 皇帝が飲む「大紅袍」 古沢襄

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