参院選がスタートした。安倍内閣の信を問う国勢選挙であるとともに、参院において与野党逆転がみられるか、今年の最大の政治決戦となった。この選挙を外国はどうみているのか?ロイター通信社はかなり詳しく報道している。
経済にウエートを置くロイターは、与党の大敗で安倍首相の退陣要求が高まれば、政局不安から株安に直面すると占った。参院選をリスク要因として意識し、金融マーケットに影響がでるとみている。金融マーケットでは、すでに与党の過半数割れを織り込み始めているとの見方を伝えた。
その一方で与党が過半数を獲得した場合は、政権安定と上げ潮政策の継続で”株高”との見方もしている。
<[東京 12日 ロイター] 第21回参院選は12日公示され、29日の投開票に向けた選挙戦が始まった。安倍晋三内閣を支える自民、公明の連立与党が参院での過半数を維持できるかどうかが最大の焦点。
ただ、年金記録漏れや「政治とカネ」の問題などで民主党はじめ野党各党が政府・与党への攻勢を強めており、結果によっては安倍首相の進退にも波及する可能性がある今年最大の政治決戦の場となっている。
この参院選を大きなイベントとして待ち受けている金融マーケットでは、与党の大敗で安倍首相の退陣要求が高まれば、政局不安から株安に直面するとの見通しが出ている。株安は円キャリートレードの巻き戻しの思惑を生んで為替が円高に振れる可能性を指摘する声もあり、結果判明まで東京市場に様子見気分が強まる展開も予想されている。
<選挙後の政局不透明感増し、市場にリスク回避の動き>
今回の参院選の改選議席数は121議席(選挙区73、比例48)。与党の非改選議席数は58議席で、過半数の維持には64議席以上が必要になる。堅い組織票が定評の公明党が目標の13議席を獲得すると仮定した場合、自民党は51議席の獲得が過半数へのバーになる。ただ、野党議員の中には、与党との連携を視野に入れている勢力もあり、過半数ラインは変動する余地がある。
公示を前に今回の参院選では、年金の記録漏れ問題が最大の争点に浮上。安倍政権発足わずか9カ月で政治とカネの問題や失言で3閣僚が交代する事態となった。
郵政解散から与党の地滑り的大勝に終わった小泉純一郎政権時の2005年9月の衆院選とは、様変わりの政治状況となっている。
選挙結果とその後の政権運営に対する不透明感が広がる中で、金融マーケットでは「来週以降投資家は、リスク回避のポジション調整に動く可能性がある」(三菱UFJ証券・シニア投資ストラテジストの吉越昭二氏)との見方が出ており、参院選をリスク要因として意識し始めた。
<自民党内で意識される44議席>
29日の投開票をにらみ、市場では与党の獲得議席数と安倍政権への影響、選挙結果を受けたマーケットの反応に対する思惑が早くも交錯している。最近の安倍内閣の支持率低下が多くの報道機関で伝えられ、金融マーケットでは、すでに与党の過半数割れを織り込み始めているとの声が広がっている。
仮に与党が過半数割れとなった場合でも、一部の野党勢力を取り込んで与党が参院で多数派を維持できるケースと、自民党が大幅に議席を減らして、安倍首相が1998年の橋本龍太郎首相のように参院選敗北で辞任に追い込まれる事態まで、様々な展開が考えられる。
複数の与党関係者の話しによると、98年参院選で自民党が獲得した44議席が、安倍首相の退陣につながる責任ラインとして意識されているという。自民党単独で45議席に届かなければ、政局になるとの見方だ。
<首相退陣なら株安、為替は円キャリー動向がポイント>
市場では、首相退陣の思惑が浮上した場合、「一時的にトリプル安」(外資系証券)との指摘や「短期的に株は売りで反応。債券は8月の金融政策変更が微妙になるとの思惑から買われる」(大和証券SMBC・チーフストラテジストの末澤豪謙氏)と株安を見込む声が多い。
一部には「安倍首相が退陣しても、自民党政権が続くのであれば、株式市場はすでに与党敗北を織り込んでおり、株安にはならない」(外資系証券の関係者)との見方も出ているが、「安倍首相の後任がすぐに絞り込まれない場合には、政局不安から株安が大幅に進むリスクもある」(国内証券の関係者)との懸念も浮上している。
為替については「単純に日本売りの発想で円が売られる可能性は確かにある。一方、株価が崩れると円キャリーの巻き戻し観測から、逆に円買いになるとの見方もできる」(三井住友銀行・市場営業部副部長の小池正道氏)と、円キャリー取引の動向がポイントになりそうだ。
与党が過半数を獲得した場合は、政権安定と上げ潮政策の継続で株高との見方でほぼ一致している。ただ、債券市場では、株高を受けて債券売りとの見方がある一方で、日銀に対する緩和圧力継続で債券買いに反応するとの指摘もある。
安倍首相退陣の場合の金融政策への影響については「上げ潮路線の後退が、日銀の金利正常化路線をサポートする。福井俊彦・日銀総裁の後任に竹中平蔵氏(前総務相)などの起用も難しくなる」(大和SMBCの末澤氏)との声もあるが、国民新党との連携や自民党の保守的なメンバーの台頭なども想定され、緩和圧力が弱まることはないとの観測も出ている。>
755 外国通信社の参院選分析 古沢襄

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