765 故宮博物院から消えたコーヒー店 古沢襄

コーヒー党ではないので、あまり関心がなかったが、中国の北京・紫禁城(故宮博物院)の中で営業していた米大手コーヒー店チェーン「スターバックス」がとうとう営業を停止したという。中国のテレビで「西側消費文化が中国の伝統的文化を侵食している」と今年初めに批判したのがきっかけとなった。
1月20日の杜父魚ブログ「コーヒー店撤去の民族主義?」で、故宮博物院の中にスターバックスがあっても中国の伝統・文化が損なわれるものでもあるまいと私は言った。だが中国人の感覚は別のようだ。
台湾の故宮博物院(台北市)は今年一月に初の女性博物院長・林曼麗女史が誕生した。林院長は東京大学で芸術教育を専攻して博士号を取得しだけあって、国際的な感覚がある。初仕事として海外からの観光客が訪れるので、女性らしい細やかさでレストランのサービスやガイド・サービスに力を入れている。北京と台北では明らかに違いがある。
スターバックスが初めて海外展開をしたのは日本。1996年夏に東京。銀座に第一号店を出店した。洗練された店内・おしゃれなメニュー品目・ヨーロッパ風のオープンテラスの併設などから大きな人気を呼んだ。
コーヒー党でない私は行ったことがない。喫茶店なのに店内を全面禁煙にしたのも気に入らなかった。だが女性層から受けて日本のカフェブームを生むきっかけとなった。私がコーヒーを敬遠するのは、敗戦直後に進駐軍が使ったコーヒー滓に着色したコーヒーを飲まされた後遺症が尾を引きずっている。あんな苦くて不味いコーヒーはなかった。
わが国には伝統的な日本茶があると、ちょっぴり国粋的になった。ロンドンで本場の紅茶を飲んでから、ますますコーヒーから遠ざかっている。だが、イタリア料理の後にでるカプチーノは、やはり美味しい。自分から積極的にコーヒーを飲むことはしないが、友人たちと懇談する時にはコーヒーを飲んでいる。
中国には伝統的な幻の銘茶「大紅袍」がある。それとスターバックスのブレンド・コーヒーを競争させる雅量があってもよいのではなかろうか。たかがコーヒー、されどコーヒー・・・。行き過ぎた愛国心は頂けない。

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