”安倍憎し”に燃える朝日の”異様すぎる選挙報道”と週刊新潮に書かれてしまった朝日新聞は、ジャーナリズム史の残るイエローペーパーぶりを発揮しているかにみえる。政治評論家の屋山太郎氏は「朝日は自分の価値観だけをひたすら押しつけてくる、ただのビラ。”反政権ビラ”ですよ」と厳しい。
戦時中の朝日新聞は翼賛報道で先頭を走って国民を戦争に駆り立てた罪状がある。その反省から”反権力”を標榜するのは分からぬでもない。だが常軌を逸した安倍パッシングは逆効果になりはせぬか。多くの朝日人は豊かな教養人だった筈である。
私の友人の朝日人は、海外特派員から帰国したら朝日の社論が大きく左傾していたことに奇異な気持ちを抱いたと言っていた。「読売や産経が右傾化した新聞になったので、左傾化を売り物にしようとしたのだろうが、朝日の中庸の精神を守るべきであった。世間が右傾化したのだから、それで朝日の姿勢が十分に国民の賛同を得た筈である」と批判していた。
朝日の特徴を出すために大きく左に振れるのは、左翼層の支持を得るのかもしれないが、中庸を求める読者層の離反を招いたのではないか。政策面で安倍政権を批判するのはいい。しかし、このところの安倍パッシングの紙面造りは、度を超えた情緒的な記事が目立つ。週刊新潮ならずとも”異様すぎる選挙報道”に眉をひそめる読者が多いのではないか。
これで参院選で与党が敗北すれば「朝日の勝利」と鬼の首でも取ったような勝利宣言をするのではないか。同様に民主党ら野党も勝利の美酒に酔うかもしれないが、安倍政権のみっともない蹉跌が原因で、自ら転んでしまうだけではないか。
得点なき相手の失点で勝利と思うのは子供じみている。安倍政権に代わる政策的なダイナミックな魅力に乏しい民主党に国民は政権を委ねる意思表示をしていない。安倍内閣の支持率が低下しても、政党支持率では自民党が民主党を上回っている。まだ国民は民主党を完全に信用していない。
朝日新聞が民主党に期待するのなら、安倍パッシングから脱して安全保障問題などの基本政策で民主党の脱皮を求める姿勢が必要になる。民主党も政権を担うつもりなら、それに応える基本政策を国民に分かり安く説く説明責任がある。
それをせずして徒に騒ぎ立てるだけなら、選挙に勝っても政権交代の道は遠のくと言わざるを得ない。国民はそれほど馬鹿ではない。国際情勢は一歩間違えば、日本が孤立する様相を帯びている。無駄騒ぎに興じている余裕はない。
785 異様すぎる選挙報道 古沢襄

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