823 アフガンのケシ畑 宮崎正弘

アフガニスタンは、いまや「タリバニスタン」と呼ばれる。
空爆で消滅したはずのタリバンが、アフガン南西部で急速に息を吹き返したからだ。アルカィーダの残党もすこしはいるかも。
パキスタンは、米国の手前、テロリスト撲滅に協力してきたが、内務省と軍はタリバンに同情的で、アフガン空爆のおりはタリバン兵士の多くが、パキスタン領内へ逃げ込んだ。
パキスタン軍はかれらが同じパシュトーン族であり、密かに或いは堂々とタリバンを庇い続けた。
ムシャラフ大統領はパンジャブ族出身のため、かれのもとに治安情報が完全に入っていたとは言い難いだろう。
英米の空爆と特殊部隊のアフガニスタン派遣によって、タリバンは壊滅したと考えられたが、それは西側の淡い幻想であった。
カルザイ政権は英米の傀儡であり、首都のカブールとその周辺を治めているに過ぎない。
北部は北部同盟の残滓であるタジク人とウズベク軍閥のドスタム将軍が治め、独自の通貨を発行しているという。
またイラン寄りの地域はヘクマチアール派と、タリバンが夜の世界を統治している。南西部に拡がるのが罌粟(ケシ)畑だ。
アフガニスタン全土の罌粟畑は、2005年に101600ヘクタールと確認されていたが、昨年は、国連推計によって183000ヘクタールに拡がっていた。
麻薬ルートは、イラン国境へ流れるものとタジキスタンからウズベキスタンを経由してEU諸国へ流れるルートがあると推定されている。
麻薬のあがりはタリバンの軍資金と地方軍閥の首長が管理しており、世界からの援助でなりたつ「カブール政権」に武力攻撃をしかける軍資金と化けている。
英米の援助は、学校と建物の建設、政府と軍の訓練ならびに道路整備などに当てられている。
庶民は産業がないために雇用の機会もなく、つまりは、罌粟栽培に走るしか生きる道がない。
米軍高官は、「空中散布による罌粟畑撲滅作戦はNATOが、無差別的だとして反対しており、また現地政府も地上作戦による罌粟畑消滅を徐々に行う方針である。つまり当面、徹底した麻薬撲滅は採れないだろう」と絶望的であるという。「(ウォール・ストリート・ジャーナル)、7月27日付け)。
タリバンの罌粟栽培による所得は2億7000万ドル。(「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」より)

コメント

タイトルとURLをコピーしました