841 日本的な感覚の外国特派員 古沢襄

フィナンシャル・タイムズの東京支局長デビッド・ピリング氏が参院選後の日本の政情について長文のレポートを書いている。外国特派員のトップ・レベルは北京に移っているので、東京の特派員は二流という厳しい見方がある。
長文の記事なのだが、目新しい論点がない。日本の新聞や雑誌の切り貼りの観がある。この記事では日本で起こりつつあることを、欧米人はそれほど関心を払わないのではないか。かつてはドン・オーバードファー(ワシントン・ポスト東京特派員・「二つのコリア」でアジア・太平洋賞大賞を受賞)のような第一級のジャーナリトが東京に駐在していた。
日本はワシントンの古森義久、北京の伊藤正、ソウルの黒田勝弘など第一級のジャーナリトが、海外に駐在している。伊藤正氏の大型連載「トウ小平秘録」などは北京の一流といわれる外国特派員でも真似ができまい。
私たちが知りたいのは、日本の政情が今後の進路にどう影響するとみるか、それが外国人にとってどう映っているかであろう。
デビッド・ピリング氏は「何がどうなるにせよ、総選挙が行われるまで、日本政局ははっきりしない状態が続くだろう。そのせいでこれから何カ月にもわたって政局が膠着し、政策が迷走する恐れがあると、一部の政治評論家は指摘する」という。分かり切ったことではないか。
「新しい政界地図が、実際の政策決定にどう影響するか、そのきざしがすでに見え始めているのだ。民主党は早くも30日、インド洋に展開する米艦隊を自衛隊が後方支援するためのテロ対策特措法の延長に、反対を表明したのだ。
自衛隊による米艦艇の給油支援。そして、イラク復興支援のための自衛隊550人派遣。これはいずれも、国際情勢にもっと積極的な役割を担っていくという日本政府の覚悟を示すものだとして、米政府は大いに歓迎していたものだ。しかし参院選の結果を受けて、こうした動きは全て失速していくかもしれない」と他人事のような風情。
一方ではワシントンではケーシー米国務省副報道官が1日の記者会見で「対テロ問題で日本政府との協力がうまくいっているのは明らかだ。あらゆる対テロ支援に日米が引き続き対処できるように(テロ対策特別措置法が)改正されることを望んでいる」と危機感を表明している。
ケーシー副報道官は「日本政府は日本が(テロの)被害を受ける可能性があり、実際に脅威にさらされ、過去にはテロ攻撃を受けたことを十分に理解している。日本政府と国民が対テロ問題で米国と協力していくことには何ら疑いを持っていない」と念には念をいれた牽制球を投げている。連日にわたって特定国に対して米国務省当局者が、内政干渉スレスレの発言したのは異例といえる。
東京の水にどっぷり漬かっている外国特派員は、本国との感度が違ってきたのかもしれない。あるいは日本的な妥協政治を見慣れたので、今は突っ張っている小沢代表も最後にはすんなり降りるとみているのだろうか。そう楽観できる小沢氏の覚悟ではないよ、と老婆心ながら言っておきたい。妥協するつもりならシーファー駐日米大使を門前払いする筈はない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました